扉が開き男性と一緒に電車から降りた。男性が去る前に、もう一度お礼を言うため、男性に向かって深く頭を下げた。
「本当にありがとうございました」
「いや、私は何もしていない。痴漢も逃がしてしまったしな。これから出勤かい?」
「あ、えっと……。これから最終面接です」
「そうか。災難だったが受かるといいな。頑張りなさい」
「はい。頑張ります!」
そう言って頭をもう一度下げると、頭にポンと暖かいものが……。
それは男性の温かく大きな手だった。
ゆっくりと頭を上げると、男性は口角を上げえて行ってしまった。男性の背中が見えなくなるまで見つめていた時、ハッと我に返る。
連絡先聞き忘れた!
これって運命の出会いだよね?
それなのに……ああー。どうして私はこうなのだろう。お礼に食事でもと連絡先を聞けばよかったのに……。でも電車が一緒なら同じ時間に乗ればまた会えるのでは……。
いや、それより最終面接だ。


