すると痴漢の手が私の体から離れた。ホッと胸をなでおろしていると、低くよく通る声の持ち主が一人の男性の手を掴んでいた。
「お前だ。何をやっていた?」
男性の声で電車内に騒めきが広がっていく。
ヤダ痴漢?最低、気持ち悪いと、そんな声が聞こえてきたとき、ちょうど電車が駅のホームに入った。電車が停車し扉が開くと、痴漢は一瞬のすきをついて、扉へと向かって走り出していた。
「あっ!待て!!」
低くよく通る声の男性がそう言ったが、痴漢は振り返ることなく走り去って行った。そうこうしているうちに電車の扉は閉まり、電車は走り出した。
私は体を強張らせ、体をカタカタと震わせることしか出来なかった。そんな私に気付いた低くよく声の通る男性が、ペットボトルの水を差しだしてくれた。
「痴漢を取り逃がしてしまい申し訳ない」
そう言いながら男性が頭を下げてきた。
「いえ、助けていただき、ありがとうございました」
そういうと目の前の男性が顔を上げた。その男性の顔を見て私は一瞬で恋に落ちた。
格好いい!
私の好みドストライク!
危機から救い出す王子様!
ボーっと男性の顔に見ほれていると、電車が止まった。
「もう大丈夫か?私はここで降りるのだが……」
心配した様子で男性がこちらを見ている。
「あっ、大丈夫です。私もここで降りるので」


