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あれは『クライス』の面接当日だった。
今日が本命の最終面接だと気合を入れていた。
なれない化粧にスーツを着て、緊張の面持ちで電車に揺られていた。電車に揺られだして5分も経たずに異変に気付く。お尻の近くにごそごそと動く何かが……。
ぞわりと全身に鳥肌が立つ。
え?
うそでしょう。
痴漢?
そう思うより先に血の気が引いていく。
痴漢の対処法は……証拠を確保して大声で助けを求める。
証拠の確保って何?
とりあえず大きな声を……。
そう思っていても喉が詰まって声が出ない。
そうしているうちに、痴漢の手がぐっと太ももの方まで伸びてくる。
嫌だ、気持ち悪い。
カタカタと体を震わせていた時だった。
「お前何をやっている?」
低くよくと通る声が聞こえてきた。


