「颯斗さん……違いますね。木下次長、月曜日からまたよろしくお願いします。お疲れさまでした」
私は頭を下げるとその場から走り出した。
もう限界だったから……。
前を向いて走り出した時には、涙があふれ出していた。
ちゃんとお礼を言えたよね。
言葉に出来たよね。
声、震えていなかったよね。
ポロポロと温かい雫が頬を伝い落ちていく。
後ろを振り返ることなく、自分の足や肺が限界を迎えるまで走り続けると、息を切らしながら立ち止まった。
苦しい。
呼吸を繰り返すだけで精一杯だった。
呼吸を何度も繰り返し息を整えると、また涙が溢れ出した。
好きだった。
大好きだった。
木下次長……。
颯斗さんって、ずっと呼んでいたかった。
もう名前を呼ぶことは叶わない。
私は大好きだった人の顔を思い出す。
そして木下次長を好きになった、あの日のことを思い出していた。


