マンガや小説のような急展開に頭が回らず、木下次長に連れられるがままにホテルの部屋までやって来てしまった……来てしまったが、どうしたらよいのか分らない。
「皆川、シャワーを浴びるだろう?」
部屋の隅で固まっていると、突然木下次長に声を掛けられ、ビクリと体を跳ねさせてしまう。
「ひゃっ、ひゃい!」
噛んだ……驚きすぎて、噛んじゃったよ。
私は恥ずかしさから、急いでバスルームに駆け込んだ。
ウソでしょう。
これはどういう展開なの?
どう立ち回りをするのが正解なんだろうか?
何が何だか分らず、とりあえずシャワーを浴びて頭を整理する。
木下次長には忘れられない人がいる。
私とは一週間だけの関係。
木下次長と美紀子さんとの絆に、私が入って行くことは出来ない。
それならどうして私はここにいる?
男性は心と体が別物だと言う人がいる。
浮気をする人の常套句だと思っていたが、木下次長もそうなのだろうか?
いや、木下次長にかぎって、そんなことはないと信じたい。
パンッと両手で両頬を叩くと、私はバスローブ姿でバスルームを出た。私は視線を彷徨わせて木下次長の姿を探す。すると部屋の端にある冷蔵庫の前で、ペットボトルの水を飲み干す木下次長の姿があった。
「木下次長、シャワーお先でした」
「あ、ああ……体は温まったか?」
「はい。木下次長もどうぞ」
「そうさせてもらう」


