昔の悲惨な過去を聞いたって、私は琴葉を泣かせるこいつが気にくわない。
視線を下ろし、気持ちよさそうに眠る琴葉の髪に触れると、胸の奥がチリチリと疼く。
こんな奴に、こんな奴に、琴葉を渡したくない。
私はキッと木下次長を睨みつけた。
いつもなら感情のままにこんな事はしないのだが、お酒が入っていたせいか、感情が制御できない。
「木下次長は一週間でも琴葉と付き合うって言ったんですよね?だったら一週間だけでも琴葉を幸せにしてあげて下さいよ。どうしてこんなに泣かせるんですか?私がこの子を幸せにしてあげたいのに……私が……私が男だったら……」
望の無い願望を口にして、情けなくなってくる。気持ちが沈んでいくと、今度は悲しみが溢れ出す。
「木下次長は男で……男ってだけで琴葉に好かれて。好きだって言ってもらえるのに……琴葉を愛することだって出来るのに……。ずるい!私には向けられない琴葉からの愛情をもらえるのに……ずるい、悔しい。どんなにあがいても、友情は愛情には変わらない。一生私には手に入られない。こんなに好きなのに!」


