「皆川さんと颯斗を見ていて辛くならないの?」
「……辛くないと言ったらウソになりますね。……それでも幸せそうに笑う琴葉を見ていることが、私の幸せなんです。琴葉が幸せならそれでいい」
「はぁーー。そうよね。私もそんな時期があったわ」
昔を思い出し、懐かしむように杏さんが言った。
その時、バーの扉が開く音がした。
そちらに視線を向けると、走ってきたのか息を切らして立っている木下次長がいた。
「颯斗、早かったわね」
「杏!どういうことだ。皆川はどうした?」
「皆川さんならそこで寝ているわよ」
それを聞いて、木下次長は大きく息を吐き出し、立ったまま両膝に手を置いて項垂れた。
「どういうことだ?皆川が大変だと言っていただろう?」
「大変じゃない。こんなに泥酔しちゃって……寝ちゃったのよ」
「だったらそう言え、一大事だとか、大変だと言われたら心配するだろうが!」
「あらそう」
「お前な!」
言い合う二人を見ながら呆然としていると、木下次長がこちらに振り返った。
「角田すまない。騒がせたな。皆川は大丈夫か?」
「はい。眠っているだけですから」
ホッと息を漏らす木下次長を見て、もやっとした感情が沸き上がる。
この人は何故か、琴葉に好かれているというのに、それを良いことに胡坐をかいているように見えてしまう。
私なら……私が男なら絶対に琴葉を幸せにして、笑顔にしてやるのに。
どうしてこの人なの……。


