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就業時間が過ぎ、香奈が私の腕を引っ張った。
「香奈?」
「琴葉、行くよ」
強引に立ち上がらされ、困惑しつつも香奈と共にオフィスを出た。そして連れてこられたのは、昨日香奈に連れてこられたバーだった。少し薄暗く落ち着く雰囲気のカウンターの端に座る。
「何があったの?」
香奈にそう言われて、私は言葉を濁す。
「えっと……それは……」
木下次長と美紀子さんとのことはプライベートな事だ。私が他者に勝手に喋って良い内容では無い。そう思い、唇を固く引き結んだ。
「私には言えないことなのね?」
コクリと頷くと、香奈が悲しそうな顔をした。
「そう……でも、木下次長がらみよね?」
コクリともう一度頷いてみせると、香奈は「はーーっ」と大きく溜め息を付いた。その溜め息を聞き、首をすくめながら私は謝った。
「ごめん……」
「琴葉が謝ることじゃない。私は木下次長に腹が立っているの。琴葉を一週間でも彼女にするって言ったのに、こんな顔させて……琴葉を幸せに出来ないなら、一層のこと……」
そこまで香奈が言いかけて、慌てたように口元を押さえた。
「香奈?」


