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俺は杏の話をふせて、美紀子のことを皆川に話した。
その間、俺は皆川の顔を見ることが出来なかった。
俺のことを真っ直ぐに好きだと言ってくれる皆川には、酷な話だと思ったからだ。今はこの世にいない人間を今も想っている。そんな俺を皆川はどう思うだろう……。この話の後、皆川の瞳に俺はどのように映るのだろうか。
悲しみか?
哀れみか?
同情か?
俺はゆっくりと皆川に視線を向けた。
すると皆川は声を上げることも無く、ポタポタと涙を流していた。ただ真っ直ぐに俺だけを見て、涙を流す姿がそこにはあった。
ああ……悲しませてしまったか。
こんな顔はさせたくなかった。
「すみません……私……知らなかったとは言え、木下次長の気持ちも考えずに……。自分の想いだけを押しつけていたんですね……」
皆川はゆっくりと椅子から立ち上がると、深々と頭を下げてきた。
それから何も言わずにオフィスから出て行くと、始業時間ギリギリにオフィスに戻ってきた。泣きはらしたような目は赤くなっていたが、回りには寝不足だと言ってごまかしていた。


