「颯斗!しっかりしろ!」
そう言いながら杏が俺の頬を叩いた。
親友が亡くなって杏も悲しいはずなのに、俺を立ち直らせるために必死に前を向いている。
「杏……俺は美紀子を愛しているんだ」
「そんなこと知ってるわよ。私だって大好きだった……愛していた……愛していたわよ……」
ボロボロと涙を流しながら杏が、そう言い放った。そして最後の言葉は消え入るように小さな声だった。
愛していた……?
杏の言葉に、俺の心は冷静になっていった。
昔から杏は美紀子と仲が良かった。男で彼氏の俺が嫉妬するほどの仲の良さだった。
その意味は……。
杏も美紀子のことを……。
そうか……そうだったのか……。
杏は今までどんな思いで、俺達を見ていたのだろうか……。
俺は無神経な言葉を杏に掛けていたことは無いかっただろうか……。
お前も早くいい人をつくれと、何度も言った覚えがある。
最低だ……。
杏は美紀子の棺を見ながら、肩を振るわせていた。
杏もまた俺と同じように美紀子を愛していたんだ。
愛する人を失った俺達は同士になった。
杏の存在は俺にとって大きなものとなっていた。
同じ悲しみを持つ人間が近くにいる。
それだけで悲しみを分け合い、生きていける気がした。


