7Days~7日間であなたを落とす方法


 木下次長の言う『あいつ』について、聞きたいのに聞きたくない。矛盾した感情が駆け巡り、どうしたらよいのか分らない。電車に乗り込み俯いていると、電車が2駅を過ぎたところで木下次長がゆっくりと息を吐き出した。

 何かを言おうとしている。

 私は両手を握り絞め、体を強ばらせた。

「あいつは……俺の婚約者だった」

 婚約者……。

 それは結婚をしようと心に決めた人がいたと言うこと……。

 でも、婚約者だった(・・・)と言うことは、婚約はしたが結婚はしなかったと言うことだ。

 顔を上げて話を促そうとしたところで、電車が停車した。電車から降り、私達は会社に向うために歩き出す。改札を出て木下次長の背中を追いかけた。いつもなら仲良く会話をしながら歩くのだが、私たちは何も話さずに歩いていた。さすがに人が多すぎてシビアな話をする雰囲気では無かったのだ。

 駅を出て人々がまだらになってきても、私達が声を発することはなかった。駅から会社までは徒歩で10分もかからないのだが、もの凄く長い時間に思える。

 足が重い。

 会社に行きたくない。

 それでも木下次長を追いかけ、会社へと向かって行く。会社のオフィスに着き、カバンを置くと、いつもなら掃除が始まるのだが、それをせずに腰を下りした。私は息をのみながらそれに倣うようにして、木下次長の近くにあった椅子に腰を下ろした。

「少し長くなるのだが聞いてくれるか?」

 そう言って、ゆっくりと話し出した木下次長の話は衝撃的なものだった。