「木下次長は……っ……一週間だけ私と付き合ってっ……うぇ……くれるってっ……ふぇっ……言ったのに……、本当は彼女がいて……っ……優しいから……木下次長はっ……彼女がっ……彼女が……っ……いること……言えなかったのかな……」
木下次長に彼女がいたことを口にするのは正直辛い。それでも香奈に今日あったことを説明した。辛くても何とか言葉にして、香奈に話し終える頃には、私の顔は涙と鼻水でグショグショだった。汚い顔をしているだろう私を香奈は抱き寄せ、優しく包み込む様に抱きしめてくれた。香奈の艶々とした黒い髪が頬に触れると、良い匂いが漂ってきた。
「琴葉、よく聞いて。木下次長は琴葉に彼女がいるって言ったの?あの人が不誠実なことをするとは思えないよ。きちんと話をした方が良いんじゃない?」
「…………」
「琴葉がずっと好きだった人なんだよ。彼女がいるのに、琴葉に付き合おうなんて言わないと思うよ。ずっと見ていたんでしょう?」
そうだ。
私はずっと木下次長を見てきた。
木下次長は優しい。
優しいけど、不誠実なことをする人では無い。
鼻をすすりながら顔を上げると、香奈が微笑んでいた。
「落ち着いた?」
「かーなー好きーー」
「はいはい。私も好きだよ」
軽く私の背中を叩きながら、香奈がそう言った。私は自分の事しか考えていなかったため、この時、香奈がどんな表情をしていたのか見ていなかった。


