就業時間になり、香奈が席を立つ。私もそれに倣うようにして立ち上がり、香奈の後を追った。香奈の後をついていくと、ついたのは落ち着きのあるバーだった。
「ここで良い?」
コクリと頷いた私を見て、香奈がゆっくりとバーの扉を開いた。私達はカウンター席の端に座りお酒を注文すると、一呼吸置いてから香奈が声を掛けてきた。
「それで?何があったの?」
「…………」
「言わないと分らないわよ」
「…………」
「琴葉……」
香奈に名前を呼ばれながら背中をそっと撫でられ、固く引き結んでいた唇をゆっくりと開いた。
「香奈……私……」
「大丈夫。ゆっくりで良いよ」
「うん……ありがとう……」
私はゆっくりと深呼吸しながら、香奈に今日あった出来事を話す。すると言葉と同時に涙が溢れ出した。言葉にすればするほど、現実を思い知らされ、話しながら嗚咽が漏れる。


