木下次長は車のエンジンを掛けたが、一向に発進する様子は無い。どうしたのだろうと木下次長の方へと視線を向けると、心配そうにこちらを見つめる木下次長の姿があった。
「本当に大丈夫か?」
「本当に大丈夫です」
まさかここで木下次長は浮気をしているんですか?などとは聞くことは出来ない。私とは一週間だけの付き合いなのだ。きっと優しい部長は、彼女である倉野さんの存在を言うことが出来なかったのだろう。だから私が木下次長を諦める方法として、一週間の付き合いを提案した。
そういうことか……。
何だろう……やだな……。
モヤモヤとした感情が私の中でわき上がる。
こんな思いをするぐらいなら、スパッと振ってくれた方が良かった。こんなふうに彼女の存在なんて知らされたくなかった。唇を噛んで必死に涙が零れないように我慢する。そんな私を木下次長が心配してくれていることは分っていたが、私は笑うことが出来なかった。
会社に戻り、私は仕事に没頭した。嫌なことを考えないように、必死に頭の中を仕事で一杯にする。考えるのは自分の企画書の内容についてだ。具体的にプロジェクトを実現化させるために、出来ることをやっていく。
余計なことは考えるな。


