『メイジア』の入り口である自動ドアをくぐり抜けエントランスに入ると、広いエントランスを装飾するように、現在まで販売されたお菓子達が並んでいた。綺麗に鎮座したお菓子達は、まるで存在を知らしめるように誇らしげに輝いているように見える。
「すごい……」
思わず琴葉がそう呟くと、木下次長は少しだけ口角を上げた。
「始めて連れて来る奴は、皆そんな顔をする」
「分っていて黙っていたんですね。私が昔から好きなお菓子がいっぱいです」
あっ、あれも、これも好きなお菓子だと、目を輝かせてお菓子のサンプルを見つめる私を、木下次長は嬉しそうに見つめた。
「そうやって、いつもここに連れて来る後輩達をからかっているんですか?」
「くくくっ……悪い」
そう言って悪びれも無く、木下次長が目を細めた。
最近、木下次長はよく笑う。
ああ……この人はどうしてこんなにも私の心を揺さぶるのだろう。こんなにも私の感情をかき立てるのはこの人だけだ。これから先も、これからもずっと、ずっと、この人だけだと思う。
ドキドキと胸が激しく鼓動を打つのは、これからの仕事のせいでは無い。この人のせいだ。
私は胸元を撫でながら、ゆっくりと深呼吸をする。それからエントランスに綺麗に並ぶお菓子達を見つめた。今は恋愛より仕事だ。ここからは気持ちを切り替えて、仕事を最後までやり遂げることを考える。せっかく『メイジア』から頂いた話だ。この企画を通してみせる。


