12時になりエントランス前で待っていると、大きな黒色のSUV車が止まった。そちらに視線を向けると、運転席から降りてきたのは木下次長だった。
「待たせたな」
「木下次長?」
「ん?時間が無いから早く乗って」
「あっ、はい」
木下次長に促され、私は助手席へと座った。
「木下次長、この車はどうしたんですか?朝は私と電車で通勤しましたよね?」
「ああ、この車は会社の駐車場に置いているんだ。会社の行為で近くの駐車料金の半額で置かせてもらっている。仕事用に使うことが多いから助かっている」
「そうだったんですか。知らなかったです」
「俺は一人で行動することが多いからな。車に乗せてやると言っても大体が断ってくるから」
寂しげに木下次長が眉を寄せた。
木下次長はこんなに優しいのに、強面な顔とオーラに皆が一歩引いてしまうのだろう。それに普段から眉間に皺を寄せ、人を寄せてけない姿も、余計に人を離れさせてしまう要因なんだと思う。
それでもフとした瞬間に、寂しげに眉を寄せる姿はキュンと私の胸を高鳴らせる。
ああ……好き。
愛おしい……。
それを声に出してしまいたい。気持ちを声に出そうとしたところで車が止まった。
「俺の行きつけの店なのだがここでいいだろうか?」
そう言われ到着したのは小さな和食のお店だった。


