電車の扉が開き、手を繋いだ状態のままで電車に乗り込んだ。
再び大きな手に包まれ、木下次長の温かい体温を近くで感じて心が震えた。
「うれしい……」
私はボソリと呟きながら、俯いた。
手を繋いだだけでこんなに嬉しいなんて、高校生みたいだが、単純に純粋に嬉しいのだから仕方が無い。
えへへ……ニヤニヤが止まらない。
そんな顔は見せられないため、俯いたまま電車に揺られていると、木下次長が心配した様子で顔を覗き込んできた。
「皆川?大丈夫か?」
そう言いながら私の顎を掴んで顔を上に向かせた。まるでキスをするときのような格好に、私の全身は真っ赤に染まっていく。
うそ……何この態勢。
キスをしようとしているわけでは無いことは分っているのに、体が熱い。先ほどまで寒くて仕方が無かったというのに、今は熱くて仕方が無い。
真っ赤になっている私を見て、木下次長も自分の行動が面映ゆいことに気づいたのか、私からパッと離れた。
「すっ……すまない。セクハラだっただろうか?」
「いえ、そんなことはありません。ご褒美タイムでした」
私がそう言うと、木下次長は右手で口元を押さえながらくくくっと笑った。
「ご褒美って……あはは」
木下次長が声を出して笑っている。口角を上げるだけの微笑みは見た事があるが、こんなふうに笑う所を見たのは初めてだ。
「木下次長って、そんな風に笑うんですね」
ほぇーっと、その顔を見つめていると、木下次長はコホンと咳払いをして顔を背けてしまった。私の角度からはその表情は見えないが、耳や首元が赤くなっているため、照れた顔をしているのだろう。その顔も見たいと思うが、今日は貴重な笑顔が拝めたので良しとすることにした。


