意外と大きな音が響いて、私は焦った。
シャッター音に気づいた木下次長がパソコンの画面から顔を上げた。
「皆川?」
隠し撮りしていた罪悪感から、あたふたしながら私はゆっくりと木下次長の前まで歩いて行く。まるで死刑執行を受ける犯罪者の気分だ。重い足取りで木下次長のデスクの前に行き、コーヒーの入った紙袋を見せた。
「木下次長、お疲れ様です。これ……あの……」
隠し撮りしていた事実を悟られないよう、私は先ほど購入したブラックコーヒーを紙袋から出して、木下次長に手渡した。
お願いだから、シャッター音についての話はしないで……このままごまかされててください。
「ん?コーヒーか?」
「はい。木下次長はブラックでしたよね?」
冷や汗をダラダラかきながら私はコーヒーで話を逸らす。
「ああ、そうだ。覚えていてくれたんだな。ありがとう」
そう言って、私の手からブラックコーヒーを受け取った木下次長が、眉間の皺を緩めた。
良かった。
シャッター音については気にしていないみたいだ。
「わざわざ買いに行ってくれたんだな」
「これぐらいしか出来ないので……」
「ありがとう」
木下次長がゆっくりと口角を上げた。
キューンと胸が音を立てた。
ああ、好き過ぎる。
「木下次長、好きです」
「皆川は口を開けばその言葉を口にするな」
「迷惑ですか?」
「そうではないが、なぜ俺なんだろうとは思っている。こんな俺の何処が良いんだろうと……」
「だからそれは……」
「待て、言うな」


