現在の時刻は18時30分。就業時間は8時30から17時30分のため、社員達は自分の仕事が終わった者から次々に帰り仕度をして帰って行く。そんな社員達を見送りながら、琴葉はチラリと木下次長を盗み見ていた。
木下次長はまだ仕事するのかな?てか、私と付き合うって話を覚えてないとか言わないよね?記憶が無くなるほど飲んではいなかったと思うけど、どうなんだろう?
言い様の無い不安が押し寄せていたとき、木下次長から声を掛けられた。
「皆川、何をしている?」
ビクリと肩を振るわせながら私は、立ち上がった。
「あっ……えっと……」
あなたを待っていたと、一緒に帰ろうと言わないと……。
頭では分っているのに、それを声に出すことが出来ず、パクパクと口を動かす。そんな私を見て、何を勘違いしたのか、木下次長が悲しげに眉を寄せた。
「俺の顔は怖いよな。だが、怒っているわけじゃ無い。大丈夫だから帰りなさい」
木下次長が怖い?
怒っていないことだって分っている。
私は喉の奥に力を入れ、声を振り絞った。
「怖くなんてありません。木下次長はいつだって優しいです。大好きです」
私の言葉に驚いた様子の木下次長が、ふっと表情を緩めた。
「そんなこと言うのは、お前とあいつぐらいだよ」
まただ……あいつって誰なんだろう?


