一日目から呆れられては大変と、両手で頬をパチンと叩いた。肌を打つ乾いた音に、何人かがこちらに視線を向けてきたが、そのまま仕事を続けている。木下次長だけが、目を見開いてこちらを見ていた。私はそんな木下次長に向かって、大丈夫ですよ。っと言う意味を込めてブイサインをして見せてから、仕事に取りかかった。
仕事を開始すれば、周りが見えなくなってしまうのはいつもの事だった。私は普通の人達より集中力がずば抜けているらしい。何も耳に入らないほどの集中を続けていると、隣の香奈にパソコンを叩く手を掴まれた。
「琴葉、お昼だよ。休憩しよう」
休憩……おお、休憩、昼休み!
私はパソコンの画面から木下次長のデスクの方に視線を向けると、そこに木下次長はいなかった。
なんと言うことでしょう……。
「木下次長と過ごす貴重な時間が……」
「なに?木下次長と約束でもしていたの?」
「してない……」
していないけど、恋人になったなら昼休みは一緒に過ごすものと思っていた。
そうだよね。
浮かれているのは私だけだ。
次長は仕方なく私と付き合っている。
私を諦めさせるつもりの一週間なのだ。
昼休みがダメなら、チャンスは仕事終わりだ。
昼休みが終わると、私はいつも以上の集中力で仕事をこなした。


