「香奈ちゃん今日からよろしくね」
「え?何がですか?」
「あら、忘れちゃったの?私の恋人になってくれるって約束したじゃない」
そんな約束をした覚えは全くない。
酔っぱらって私はそんな約束を?
記憶が全くない。
ごくりと唾を飲み込んでいると、杏さんが離さないとばかりに私を抱きしめてきた。
「諦めて私のものになりなさい」
そう言って杏さんが私の唇をふさいだ。
それから数週間後、琴葉と木下次長が付き合いだした。杏さんが木下次長に何か言ってくれたようだ。それが何だったのかは私は知らない。しかし、木下次長は吹っ切れたような顔で、琴葉を愛おしそうに見つめている。琴葉もとても幸せそうだった。私はそんな幸せそうな琴葉におめでとう。よかったね。と言うことが出来た。それは本当に本心からだった。
そう言うことが出来るようになったのは杏さんのおかげだった。
杏さんは私に対してどこまでも甘い。愛していると何度っもささやき、愛おしいと言葉にしてくれる。私がずっと欲していた言葉。甘やかし倒す杏さんに私は心を開いていった。
あの日、私たちは何もなかったらしい。
それは杏さんの優しい嘘だった。杏さんがああ言ってくれたのは、私のことを思ってのことだったのだろう。私が前に進めたのはこの人のおかげ。
杏さんは私にとってかけがえのないパートナーだ。
杏さんが私のパートナーだと、琴葉に言える日が楽しみだ。琴葉はどんな顔をするだろうか?きっと嫌な顔をせず、受け入れてくれるだろう。
だって、琴葉だから……。
* FIN *


