「ごちそうさま」
「おそまつさまです」
反射的にそう答えてしまった……ってそうじゃないでしょう。心の中で自分に突っ込みを入れる。しかし、私はしゃべり方を忘れてしまったかのように、口をパクパクすることしか出来なかった。そんな私を見た杏さんがもう一度私の唇に、今度は軽く唇があたるだけのキスを落とした。それは「チュッ」と軽い音を立て離れるだけだったのだが、それがものすごく恥ずかしい。
真っ赤な顔を隠すことも出来ずに硬直していると、杏さんの顔がまた近づいてきた。
「ちょっ、何回するんですか!」
「えーっ、だって可愛いんだもん」
「だもんて……。これはどういう状況ですか?」
「あれ?忘れちゃったの?昨日話を聞いて、香奈ちゃん酔いつぶれちゃって、私に食べられちゃったのよ」
そう言われて私はシーツの中の自分の姿に青ざめた。
「服着てない……」
「ん?気持ちよかったね」
何が?とは私は聞かなかった。私も大人だ。この状況がすべてを物語っていた。しかし嫌な気持ちにはならなかった。それは相手が杏さんだったからだろうか?今は自分の気持ちがよくわからない。そんな私の頭や頬に、杏さんがキスの雨を降らせる。これでもかと愛を表現してくる杏さんに嫌な気持ちは抱かない。むしろ心地よいと思ってしまう。


