「……ん…」

あれ、、なんか頭がぼーっとするというか
目の前がぼやけるというか


「起きたか」

!!??

聞き覚えのある声にハッとして一気に目が覚めた。


ガバッ!!

「わっ…」

「おい、急に起きあがんなって」


急いで起き上がったせいで、くらっとしてしまった。


「ごめんね、ありがとう田村くん」


そう、何故か目の前には田村くん。
そして、ここはわたしの部屋。
さらに、わたしはベッドで寝ていたらしい。



わたし、なにか忘れてる。

大事ななにか・・・



「あー!!!!!」

「うるせっ!なんだよ、急に」

「今何時!?バイト!!バイト行かなきゃ!!」


記憶が曖昧だけど、バイトに行こうとしていたことはなんとか思い出せた。
田村くんには聞きたいことが山ほどあるけど、ひとまずバイトに行かなければ!!


「今12時過ぎ」


へ・・・??

わたし、確か9:00出勤だったはず、、、
遅刻どころの騒ぎじゃない


「ヤバイ!!連絡しなきゃ!!えっと…スマホ、スマホ…」

焦って無我夢中にベッドの上でスマホを探す。


パシッ
探す腕を掴まれた。


「大丈夫だから。狩谷が桜井さんの代わりに行ってるよ」


え…

「想汰…くんが?」

「あぁ。だから安心して休めよ?たぶん、昨日寝てねーだろ?」


図星。

龍弥とのことがあって一睡も出来なかった。



「狩谷帰ってきたら、ちゃんと話せよ?」


「田村くん」


あぁ、なんでわたしは


「わたしは…想汰くんのそばにいていいのかな…」


田村くんにこんなことを言ってるんだろう。



「は…?」


「だって…さっきもわたしのせいで龍弥にあんな風に言われて……ひどい言葉たくさん。。」


わたしのせいだ。



「なにそれ。龍弥(アイツ)が狩谷のこと、犯罪者って言ったことにビビってんの?」


「え…?」


「桜井さんの気持ちってその程度だったんだな。じゃあ離れたら?」


なにそれ


「中途半端な優しさはメンドイだけだよ」


ヤバイ



ムカつく


「違うし!!そんな軽い気持ちで想汰くんといるんじゃないもん!!」


わたしがどれだけ好きか


「バカにしないで!!」


叫んでから冷静になる。


「…あー、、えっと…ごめんなさい」

仮にも私が目を覚ますまで部屋にいてくれた人に何を怒鳴ってるんだ、、、

最悪、私。


「…めんどくせーカップル」


その言葉に俯いていた顔を上げた。

怒ってると思った田村くんが優しく笑ってる。


「狩谷も大概めんどくせーけど、桜井さんも負けじとめんどいね」

そう言いながらクスクス笑ってる。


「田村くん、あのー…」
「いてやってよ」

「え…?」


「狩谷のそばにいてやって」

伝わる。
田村くんが想汰くんを大切に想ってくれていることが。



「わたしがそばにいたいんです」


そして改めて自覚する。
こんなにも想汰くんを好きなことが。


だからこそ、わかりたい。
知りたい。

欲深いかもだけど
なにもかも知りたい。


なんだろ、この感情、、、



コンコン…

「あっ…はい!」

「詩、起きた?入るわよ」

声の主はお母さん。


「体調はどう?田村くん、引き止めてしまってごめんなさいね」

「いえ、全然です。狩谷からの命令でもあるし」

「え!?そうなの!?命令!?」


田村くんはクスクス笑ってる。


「詩、体調落ち着いたならお昼食べたら?田村くんも一緒にどう?」

「うん、食べる」

「俺までいいんですか?ありがとうございます」

わたしはベッドからゆっくり起き上がる。


「あ、でも狩谷に殺されっかな?」

「え?」

ボソッと呟いた田村くんはわたしの顔を見て


「まっ、ボディガード頼まれたしいっか♪」

そう言ってまた笑った。


「ボディガード?田村くん、意味わかんない」

「狩谷に直接聞いてー」



今朝までの気まずさや不安などが薄れていく。
想汰くん、早く会いたいよ。