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ん…
身体、いた。。
目が覚めると床で寝てしまっていた。
隣から音がして振り向くと田村先輩が寝ていた。
あー…あれからお互い寝落ちしちゃったか。
スマホを見ると不在着信が1件。
相手を確認すると詩先輩から。
時間は夜中の3時過ぎだった。
なにかあった!?
今は朝の8時前。
急いでかけ直すけど出ない。
くそっ
なんで寝てたんだよ!
こんな時間に電話なんて珍しくて
絶対なにかあったはずだ。
スウェットのまま気づけば靴を履いていた。
「ん…狩谷?どした?」
ドタドタとぼくのうるさい足音で起きた田村先輩。
「すみません、先出ます!鍵開けたまんまでいいんで好きな時に出てください!」
バタンッ!
「いや好きな時って…てかおまえ寝起きのままじゃん」
あの慌てようはなんかあったか…?
先輩の家の前に着いてハッとする。
こんな時間にインターホン鳴らしていいのか、、、
親御さんたちになんて言お、、、
ガチャッ
そんなことを考えていると、家のドアが開いた。
「先輩!!」
「あっ…想…汰くん」
合った視線をすぐに逸らした先輩。
「どうしたの?こんな早くに」
やっぱ何かあったんだ。
「夜中の電話、気づかなくてごめん」
するとさっきまでの不安そうな表情から一変、急に笑って話しだした先輩。
「え!?わたし電話かけてた!?寝ぼけてたかも!ほんとにごめんね」
そう言って笑いながらぼくの横を通り過ぎる。
「もしかしてそれでこんな早く来てくれた!?ごめんね!!わたしバイト行かなきゃで」
ねぇ先輩
まだわかんないの?
「きゃっ‥‥!!」
バイトに向かおうとする先輩の腕を引っ張った。
「なにす‥!」
先輩が振り向いた瞬間、キスをした。
「行かせない」
そんな演技でぼくを騙せると思った?
ずっと先輩だけを見てきたんだよ?
「何があったか、言うまで離さない」
嘘をついている時なんてすぐにわかる。
作り笑いだってなにもかも。
「だって…」
「先輩?泣かないで、なんでも言って」
小さな肩を震わせて泣く先輩
ぼくはぎゅっと抱きしめた。
なにがこんなにも先輩を追い詰めているのか
それはきっとー・・・
「詩!!」
ドアの方から声がして振り向くと龍弥が家から出てきた。
そう、原因はきっとコイツ。
「おまえ…ほんとに消されたいみたいだな?」
「想汰くん…!?」
ぼくの甘さが全てを招いたんだ。
先輩がこんな風に悲しんでいるのも
「は?なんか勘違いしてない?詩が苦しんでんのはテメーのせいだよ」
ぎゅっ
先輩を支える手に力が入る。
図星だからか…
「ちが……」
「なにしたんだよ!詩先輩に!」
先輩がなにか言葉を発したのに気づかず龍弥と言い合いになる。
「ひとに言えない過去がある奴が詩のそばにいんじゃねーよ!」
龍弥の言葉に、口より体が先に動こうとした。
「詩せんぱー…」
バチンッ!!!
そんなぼくの腕をすり抜けて、詩先輩は龍弥の目の前に行き思いっきりビンタをした。
「いい加減にしなよ龍弥。もう…ほんとに許さないんだから」
また泣いてる。
ぼくが泣かせてしまってるんだ。
「詩、俺は…悪者でもなんでもなるよ」
グイッ
「…痛っ……!」
今、この腕を離しちゃいけない。
想汰(アイツ)から詩を引き離すためには
「龍弥、離して!」
「アイツは…犯罪者だよ」
ズルイってわかってる
いや、ズルイってより最低なやり方だな
でも、それでも詩を渡したくない
しかもこんな奴には。
「なに言って…」
「想汰は犯罪者なんだよ」
想汰くんが…
犯罪者……?
龍弥の言っている意味がわからない。
後ろにいる想汰くんを見る。
泣きそうな顔。
なんで、こんなことになってるの?
わたしはただ
ただ
想汰くんと一緒に楽しく過ごしたいだけなのに。
想汰くんの泣きそうで、悲しみに溢れた表情。
また見えない壁が出来た気がした。
そして、またあの感覚が襲ってくる。
想汰くんがどこか遠くにいってしまうような
そんな感覚が。
「行かない…で」
目の前が暗くなったと思った瞬間、意識が遠くなっていくのがわかった。
「先輩!!」
「詩!!」
薄れゆく意識の中で想汰くんと龍弥の声が聞こえた。
でも、それ以上にわたしを覆うのは
このなんとも言えない嫌な予感。
大切なあなたがいなくなってしまう
嫌な予感が。



