ガラッ

「狩谷、どうしたんだよ…って、え!?」


あれ、コイツ確か…


「龍弥さん…ですか?」

「あぁ…」


詩と狩谷(アイツ)の友達。。
さっきコイツに電話してたのか?


「なんで倒れてるんですか!?てか、狩谷は!?」

「ゲホッ…なんでもない。」


しばらく沈黙が続く。


「とりあえず保健室行きましょ」

「大丈夫だから」

「大丈夫じゃないから言ってるんです」

俺を持ち上げようと掴んだ腕を振り払った。


ガシッ!!

「歳上のくせに頭悪いですね?保健室行くって言ってんですよ。手間かけさせんな」


コイツ…狩谷とはまた違っためんどくささがあるのがすぐわかった。



「なにがあってこんな所打ちつけたの?…喧嘩でもしたの?それとも他に…」

「いえ階段でつまづいて腹から打っちゃったんです」

「ならいいけど…」

なかなか鋭い保健室の先生。
なんとかごまかせたけど。



ピシャッ

湿布を貼ってもらって保健室を出た。


「悪かったなわざわざ。ありがとう」

「別にいいですよ。…ちょっとこの後時間あります?」




「なんで」

「え?」

「なんであんたと俺がお茶してるわけ?」

確か田村…だったか、コイツに言われるがままついてきたら大学から少し離れたカフェに連れてこられた。


「ここのコーヒーうまいんですけど、口に合わなかったですか?」

「そんな話してんじゃねーよ」

なんだ?コイツ天然か?



「んー、じゃ結論から言っちゃいますね」

そう言いながら田村はズボンのポケットからタバコを取り出した。


「狩谷と桜井さんの邪魔すんな」


取り出したタバコに火をつけた。

「ここ、タバコも吸えるし最高なんすよ」


それだろ、ここに来た理由。



「…なんのことかわかんねぇんだけど」


「なんか色々調べてんでしょ?狩谷のこと。女々しいなぁ」


は?

「狩谷の方がよっぽど女々しいことしてると思うけど?」


イラっとした。


「あ、それはそうですね」

コイツの考えてることがわからない。


「外野がとやかく言うことじゃないと思います。狩谷に対して思うことがあるなら、桜井さん自身が聞くなり調べるなりしたらいいと思うんです。あー…まぁ、あと親御さんがね」


田村が言っていることはわかる。


「俺らは見守ってればいいんですよ」


ガタッ!!
「それじゃダメだ!!」


俺がいきなり大声で立ち上がったから田村はもちろん、周りのお客さんも驚いてこっちを見ている。

周りに頭を下げて座る。


「なにがダメなんですか?」

田村といえば、意外と冷静。


「アイツは…危険な奴なんだよ」

「危険?」

田村はわかってるのか、わかってないのか
俺にいちいち聞き返してくる。



「俺が…悪者になってでもアイツから詩を守らなきゃダメなんだ」


そう、あんな危険な奴から。



ガタッ
沈黙が少し続いた後、田村が席を立った。


「龍弥さんが言ってることはわかります」

田村がジッと俺を見て言葉を続ける。


「でも、龍弥さんが言ってる“理由”ってちゃんと自分の目で見たことですか?人伝に聞いただけなんじゃないですか?」


「それもあるけど…さっきだってアイツはー…!」


「なにかスイッチ押したんでしょ、狩谷の」


スイッチ…?

「別に狩谷を庇うつもりはないですけど、ちゃんと自分の目で見たことでやりあわないとどうかと思います」


「あんなストーカー野郎にか!?」

「はは!ストーカーかぁ。まぁそれは合ってるっすね」


田村の言いたいことがわからない。


「どんなあんたを見たって桜井さんは今のあんたと自分の知ってる昔のあんたを信じてくれてるんじゃないすか?」


大学に狩谷が手を回したであろう俺の浮気相手たちが来た時のことを思い出した。



「俺は友達守りますから。忠告しましたからね、じゃ」


そう言って田村は先に帰っていった。

…変な奴。
俺は田村の言ってることがわからないんじゃない。



わかろうとしないだけなんだ。