少しして田村先輩がゆっくりとぼくから離れた。


「か、勘違いすんなよ!これは…なんつーか、友達として励ましたいってゆーか…」

らしくなく少し?顔が赤い田村先輩。


「勘違い?なにがですか?」

嬉しかった。


「ありがとうございます。励ましてくれて嬉しかったです」


田村先輩がなんとも言えない気の抜けた顔をしてる。


「先輩は…友達っすね」


ポカッと肩を叩かれた。



「なんで上からなんだよ」


詩先輩以外に、信用したいって思えた人。


【友達】か。



「桜井さんに連絡していいか?」

「え?」

「倒れた時、おまえ完全に意識失う前に桜井さんに言うなってひたすら言ってたから連絡してねぇんだよ」


そっか
俺、無意識にそんなこと言ってたんだ。


「いえ、大丈夫です。心配かけたくないんで」

それに

「バレたくないし。寝不足の理由」

「龍弥のことか?」

「まぁ、そんな感じです」


昨日、先輩とした後に寝れるわけないし。
先輩の熱がずっと身体に残ってる感覚だった。


そんな恥ずかしいこと、言えるわけない。



ーーーーーーーー

「想汰くん!田村くんと連絡ついた!?すごく心配だったんだけど!」

「ごめんね先輩。スマホの充電が切れちゃっててさ。充電器借りてなんとかなったよ」

「それなら仕方ないね〜」

素直な先輩。
ぼくの嘘をすぐ信じてくれる。


あれから保健室でしばらくゆっくりして、詩先輩との帰り道。



「ねぇ、想汰くん」

「ん?」

「えっと…その……」

下を向きながらモゴモゴしてる先輩。
可愛すぎる。


「今日も…一緒にご飯食べたいし、家に行っていい?」


あー、天然なのはわかってるけど


「先輩、煽るの上手ですね」

そう言いながら先輩の唇に触れる。


「ふぇっ!?」

一気に顔を真っ赤にしてる。

かわいい
かわいい

たまらない


やっぱりこんな生半可じゃダメだ

ぼくはこの人を絶対失いたくない
離す気なんかさらさらない


ならやることはひとつだ

そんなのわかってる


「想汰くん、田村くんとすごく仲良くなってるよね」

「え?そうですか」


なのになんだ

この邪魔してくる感情は


「想汰くん?」

無意識にギュッと先輩の手を握った。



「ねぇ先輩。ひとの気持ちってなんだろうね」

「え…?」

「なにがきっかけでいらなくなるんだろう」

「想…「なーんて。意味不明なこと言ってごめんなさい」


こんなに好きでたまらなくて
愛しくてたまらないのに

「一緒にご飯食べれるなら買い物行きましょ」

「…うん」


信用したいってこんなに思ってるのに
ぼくはあなたを信じきれないんだ。

怖いんだ。



でもこんなこと、ぼくに言う資格なんてないのにな。



ーーーーーーーーーー


「え?バスケの試合?」

「そう!来週なんだけど想汰出てくれない!?」

懲りずにまた誘ってきた柳瀬。
田村先輩に続いて、こんなぼくにかまってくる珍しい奴。


「いや、だからぼくもうバスケしないって」

「一回ぐらいいいじゃん!てか、もうメンバー入れてっからな」


は!?

「あのな、ぼくはー…「想汰くん、バスケするの!?」


「詩先輩!?」


あれ?先輩、一緒の授業だったっけ?
確かこの時間は空きのはずじゃ…


いそいそとぼくの隣にやってきた先輩。


「えへへ。一緒に授業受けたいなと思って来ちゃった」


かわいすぎる。
無理


「ダメだったかな…?」

はい、この上目遣いはもはや犯罪。
少し不安げな表情でぼくを見る先輩。


「ダメなわけないです」

「わーい、よかったー」

先輩ってやっぱり危険だよな
こんな大勢の前でぼくを煽ってくるんだから。←だいぶ勘違い


「想汰くんがバスケしてるところ見てみたい」


先輩に頼まれたら断れるわけないじゃんか。



「…わかりました」

「わーい!」

「まじで!!彼女さん、ありがとうございます!!」






「今回急遽サポートで入ってくれることになった狩谷想汰くんです!みんなよろしくな!」

あれから2日後、バイトが休みの放課後に練習に呼ばれた。
ぼくの代わりに柳瀬が自己紹介してるし。


「うわっ!近くで見るとさらにイケメン!」

「おまえ近くで見たことねぇの!?」


相変わらずぼくの顔の話ばっか…


ポンッ

「こんな奴らだけどさ、バスケは本気だから♪」

そんなぼくの心を見透かしたように柳瀬がぼくの肩に手を置いて言った。