〈お母さん!行かないで!!ぼく、いい子になるから!!〉
〈あんた邪魔なんだよ〉
ぼくは…邪魔 なんだ。
〈おまえの顔を見るとあの女を思い出して吐き気がする!〉
目の前にすごい量のお金。
〈くれてやるから2度と俺の前に現れんな〉
こんなのいらない
〈お父さん!ぼくお金なんていらないから、一緒にいてよ!〉
お父さんの足にしがみつくと、思いっきり投げ飛ばされた。
〈い、、た…〉
〈聞こえなかったのか!?おまえの顔なんか見たくねぇんだよ!〉
そう言ってお父さんは家から出ていった。
お母さんもお父さんもいない。
部屋の鏡を見ると、お父さんに殴られて頬から血が出てる。
この顔がいけないんだ
ぼくがいい子じゃないから、お母さんもお父さんもいなくなったんだ。
ぼくが…
ーーーー・・・
目が覚めると白い天井が見えた。
「狩谷!大丈夫か!?」
え…
「田村先輩…」
ここ、どこ。。
「はぁはぁ…あれ?ここは…」
ぼく…息が荒い。
「保健室。おまえ、かなりうなされてたぞ」
あー…
夢のせいだ。
てか
「なんで保健室…?」
「覚えてねーの?おまえ、俺と会った後すぐ倒れたんだよ」
え!?
「おまえ、ちゃんと寝てんの?」
「えぇ、まぁ」
「なんだその返事。どうせ寝てねぇんだろ」
昨日詩先輩を送ってからは一睡も出来なかった。
それにここ最近龍弥(アイツ)のことで色々してたしな・・・
「迷惑かけてすみませんでした」
謝ったあと、田村先輩に頭をわしゃわしゃと強く撫でられた。
「ちょっ…!先輩!?」
「迷惑とかねぇから。とりあえずあと少し寝ろ」
田村先輩
やっぱ
ぼそ
「変な人…」
「あ!?俺のこと言ってんのか!?」
やば。
心の声出てしまった。
「あはは!すみません、心の声出ちゃいました」
「おまえ、ちゃんと笑えんじゃん」
え?
「普段もそうやって笑ってればいいんだよ」
やっぱ変だこの人。
「ぼくにそんなこと言うの詩先輩と田村先輩ぐらいです」
「あっそ」
開いてる窓から入ってくる風が冷たくて、もうすぐ冬がやってくるんだと実感した。
「ぼくをここまで運んでくれたのって先輩ですか?」
「あぁ。おまえでけーし大変だったんだぞ」
「先輩、喧嘩とか強くて男らしいのに背低めですもんね」(←185センチ)
「うるせーよ!おまえが高いだけだろ!」(←170センチ)
「はは!すみませんって」
この風の冷たさのせいだ。
「ぼく…龍弥を詩先輩のそばから消すために論文処分しに行ってたんです」
なに話してんだ、ぼくは。
「アイツの本来行ってる大学にも行って色々探って女癖悪いことわかって…利用できることは全部してやりました。案の定、龍弥にキレた女たちがこっちにやってきましたけどね」
「桜井さんに龍弥の女癖の悪さを見せたかったのか?」
あー…まぁ、そうだな、、、
「それもありますけど1番はー…」
表情ひとつ変えずにぼくを見る田村先輩。
「この大学でのアイツの居場所がなくなればいいと思ったんです。孤立すればいい、なにもかもなくなればいい」
そう、これが本音
「アイツが大学(ここ)に来れなくなればいいって」
「そんなにアイツに恨みがあるのか?桜井さんのことだっつっても」
恨み?
「恨みとかそんな簡単なものじゃないです」
許さない
「ぼくから大切なものを奪う奴はどんな奴だって許さない。そんなことさせない」
ドス黒いなにかがぼくを支配する。
「…で?論文はどうしたんだよ?」
ぼくは意気地なしだ
「捨てましたよ」
ぎゅっ
は…?
今、、、なにが起きてるんだ…?
「田村…先輩?」
田村先輩に抱きしめられている。
「嘘つくな」
その言葉に胸がぎゅっとなった。
「捨ててねぇの、丸わかりなんだよ」
ヤバイ
視界が揺らぐ
涙のせいで
「もう強がんな。おまえはひとりじゃない」
我慢したいのに涙が止まらない
「すみません…」
小さくこう応えるのが精一杯で
それをわかってか田村先輩はポンポンッと優しく背中を叩いてくれた。



