「じゃーね、先輩」

「うん…」


あれから家の前まで送ってもらった。

離れたくない。
まだ想汰くんといたい。



「先輩、さみしいの?」

ドキッ!


「えっ!そんなこと…な、ないし!」

顔に出てた!?
恥ずかしくて慌てて誤魔化す。



「そっかー。ぼくはさみしくてたまんないから、一緒だったら嬉しかったのに」


え…そうなの?
想汰くんも同じ気持ちなの?


きゅっ
目の前にいる想汰くんの服の袖を掴んだ。



「嘘ついた…。ほんとは……すっごくさみしい」 


そう言うと、想汰くんがすごくかわいい笑顔で嬉しそうに笑った。
わたしはその笑顔に胸がぎゅーっとなる。



キス…したい



ゆっくりと想汰くんに顔を近づける。


「せんぱー…」

ガチャッ



「詩!!」


「きゃっ」

急に家から出てきた龍弥に腕を引っ張られて、想汰くんから離された。



「遅いから心配した」

「ご、ごめ…」


・・・ん?

咄嗟に謝ってしまったけど

「わたし、遅くなるって言ったよ?」 


そう!
朝、ちゃんと言ったし!



「わかってる…。でも待ってたんだよ」


龍弥がなんだか泣きそうに見えた。
そんなはずないのに。

だって、泣く理由なんてないし。
わたしの視力がだいぶ落ちているのかな。 



「ぼくのせいです。すみません」

想汰くんの声でハッと我にかえる。


「でも…先輩はぼくの彼女ですしあなたに心配なんかしていただかなくても大丈夫です」


「俺は幼なじみでおまえより付き合い長いんだよ。心配だってする。それとも…」


グッ
私の腕を掴む龍弥の手の力が強くなった。



「おまえも俺と同じぐらい昔から詩を知ってる…とか?」


え…?




「なんてな。詩、入るぞ」

「あ、ちょっと!想汰くん、また明日ね!」


想汰くんは優しく笑って手を振ってくれた。


そして、龍弥に引っ張られて半強制的に家の中に入った。



引っ張られるまま龍弥の部屋までやってきた。


パシッ
龍弥の手を払いのける。

「龍弥!想汰くんはわたしの誕生日をお祝いしてくれてたんだよ!しかも、ちゃんとお父さんとの約束も守って送ってくれたのに。なんであんな冷たい態度取るの!?」


「なんで…って?理由知りたい?」


龍弥がわたしに近づく。
わたしは後退りをして、壁に追い詰められてしまった。


「詩の瞳(め)にはアイツしか映ってないの…?」

また龍弥が泣きそうな悲しい表情をした。



「りゅ…」

コンコンッ


「詩?帰ったか?」

え!?


ドアを開けるとお父さんがいた。


「うん、さっき帰ってきたよ」

「そうか」

チラッと龍弥を見る。


「詩、早く風呂入ってこいよ」

そう言った龍弥を見ると、さっきまでの表情が嘘のようにいつもの龍弥になっていた。


「あ、うん…」


お父さんのおかげと言っていいのか、、、
部屋の雰囲気というか空気も普通になり、少しホッとした。




ーーーーーーーーーーーー


「詩、お誕生日おめでとう。あら、可愛い服ね」

「お母さん、ありがとう。今日のために買っちゃった」


次の日の朝。
7時には目が覚めちゃって、そこから念入りにメイクやヘアセットした。

そして今日の想汰くんとのデートのために、バイト代を切り詰めて買ったワンピース。

想汰くんも可愛いって言ってくれたらいいなぁ。。
なんて、柄にもなく思ってしまう。



「お父さんが明日の夜はちゃんと家にいなさいって言ってたわよ。詩のお誕生日をお祝いしたいって」

「うん、わかった。嬉しい!」

なんだかお父さんらしい言葉。
想汰くんとの関係を認めてもらえてるようで嬉しいな。


ピンポーンー・・

リビングの時計を見ると約束の10:30を指していた。
想汰くんが迎えに来てくれたんだ。


「行ってきます!」

「楽しんでね」


玄関で急いで靴を履く。



「詩」

後ろを振り向くと龍弥がいた。