授業が終わって急いでスーパーへ向かう。


詩先輩の誕生日前夜。
盛大にお祝いしたいけど、本番は明日だから我慢。

だから、今日は先輩の好きなクリームシチューを作ることにした。
高校の頃、カフェで友達と話してるのを盗み聞きした時に先輩が言っていた。
それに先輩の家で世話になってる時も嬉しそうに食べてたしな。



「あら狩谷くん!少し久しぶりじゃない」

「こんにちは。腕の骨にヒビ入ってたんです」

「えー!大丈夫なの!?」

「はい、もう全然大丈夫です」


このスーパーには、こっちに引っ越してきてからちょくちょく来るようになった。


「それならよかったわー。今日はなににする?」

「このシチュー用の肉を300グラムください」


スーパーの中に入っているお肉屋さん。
ここで働いているおばさんと、いつの間にか少し話をするようになった。
なんか不思議だけど。


「狩谷くん、なんだか明るくなったわね」

「え?そうですか?」

「おばさん安心したわ」


掴めない人。
なのに、なぜか話してて苦にならない。



「はい、おまたせ」

レジの金額を見ると、明らかに金額がおかしい。


「あの…金額間違ってません?」

「これで合ってるから。腕の怪我が治ったお祝いね♪」


それから何度か渋ったけど、結局おばさんのおしに負けて安い金額で買わせてもらった。



「ありがとうございます。次はたくさん買いますね」

「顔見せてくれるだけで嬉しいから。しっかりご飯食べるのよー」


おばさんの笑顔でなんだか心があったかくなる。
この感覚…
詩先輩の家で世話になってた時に感じた温かさに似てる気がする。


この感覚をまだきちんと言葉に出来ない。




スマホをチラッと見る。

「やべ、急がねーと…」



先輩のことを考えながら選んでいたら、今までで1番な量の食料を買い込んでしまった。



あ、先輩が好きって言ってたアイスも買っとこ。




ひそっ
「イケメンが真剣にアイス選んでる」

「イケメンが買い物してる。わたしが買ってあげたい〜」



スーパーでも人気な想汰くんでした。