「大変お世話になりました。ありがとうございました」

次の日の朝イチ
想汰くんはわたしたち家族に深々と頭を下げてくれた。


「あとで迎えに来ますね」

そして自分のマンションへ帰っていった。



「なんだか寂しいわね」

お母さんがボソッと言った。


「いつでも夜ご飯とかに呼んであげてね、詩」

「も、もちろん!!」


わたしは嬉しくて朝からとんでもない大声を出してしまった。



ーーーーーーーーー


「なに寂しがってんの。一緒に大学来てたじゃん」

「そうだけど〜…」


想汰くんは着替えなどの荷物を自分の家に置いてから迎えに来てくれて、一緒に大学に向かった。

そう、別になにも変わらないんだけど



「あんなに近くにずっといたら、前の距離に戻ると…なんだろ、、、」


「ん??なに?」


「すごく寂しいの。家だってすぐの距離なのに変だよね」



お昼休み。
食堂で亜紀は大きなため息を吐いた。


「ベタ惚れだね」

亜紀の言葉に急に恥ずかしくなってしまった。


「羨ましいよ。お互いそんなに想い合ってるって」


「えへへ…そう、、かな?」

「あー!惚気てるー!!ムカつくー!!」



今日は想汰くんバイトだからー…
「詩〜!!」


食堂の入り口からわたしを呼ぶ大きな声の主は


「龍弥!うるさいよ!恥ずかしいし!!」

「そーいうあんたも十分大声だけど?」

隣で亜紀にツッコまれ項垂れる。




「この人が前詩が言ってた幼なじみ?」

「どーも。龍弥です」

「詩の友達の亜紀です」


今日から本格的に龍弥がウチの大学に通いだした。



「詩〜大学内案内してよ♪あっ亜紀ちゃんも一緒にさ」

「この前ある程度説明したじゃん」

「口頭じゃわかんねぇし」


仕方ないなぁー


「龍弥、この後空きあるの?」

「ちょーどこの後空きなんよ」

「そっか。わたしも空きだから案内するよ」

「おー!やったね!」


喜ぶ龍弥を見て思わず笑ってしまった。


「なに笑ってんだよ」

「あ、ごめんごめん。こんなことでそんな喜んでくれるんだって思って」


くしゃっ

龍弥がわたしの頭を撫でる。


「俺にとったらすげー嬉しいことなんだよ」


あ…この香り、、、




パシッ

龍弥の手が離れた。


「触んないでください」

「想汰くん…!」


想汰くんが龍弥の手を払い退けたから。




「よっ!“元バスケ部”の彼氏くん」


あれ?

「龍弥、なんで想汰くんがバスケ部だったって知ってるの?」

わたし、話したっけなぁ?



すると、龍弥がニッと笑った。


「大学(ここ)来るようになってわかったんだけど、彼氏くんって結構有名人だよな?頭良くてスタイル良くてかっこよくてスポーツ出来てって…ハイスペだって女子がよく騒いでるよ」



チクッ・・・
なるほど…それで知ったんだ。

わたしは後ろから抱きしめてくれてる想汰くんをチラッと見る。

ん?っという表情でわたしを見る想汰くん。



胸がチクッとしてザワザワする。

モテるよね。
そんなの、付き合う前からわかってたし。



「彼氏くんって昔からなんでも出来たの?」


「言わなきゃいけません?」

おわっ!
ケンカ腰の想汰くん。


「いや、ちょっと気になっただけ」

「そーですか」

「教えてくれてもいいじゃん」

「………」


「おーい、無視すんなって〜」



「龍弥、ちょっとしつこいよ」
想汰くん、昔のことあんまり話したくないだろうから


「そんなグイグイ聞くことじゃー…「おっ!いたーー」


わたしの言葉を遮ったのは田村くんだった。


「かーりや♪次、俺と一緒の授業じゃん。行こうぜ」

田村くんが想汰くんの肩に腕を回した。



「想汰くんと田村くん、いつの間にそんな仲良くなってたの!?」


前はあんまり仲良くなさそうだったような…?



「狩谷が腕怪我してからかな?なっ?」

「ウザイっす、先輩」

これは想汰くんの照れ隠しだ。


「あー、あなたが桜井さんの幼なじみ??」

「え?そうだけど」

「俺より2個上ですよね?俺、桜井さんとタメなんで」

「あぁ、そうだな」


田村くんが想汰くんの腕を引っ張った。


「年上ならもーちょっと年上らしくしたらどうですか?余裕ないんですね」


田村くんの様子が変だ。



「早く行くぞ狩谷。次、校舎遠いんだし遅れんのやだよ」


「…わかりました。腕だけ離してください」

想汰くんと田村くんが食堂から出て行く。



「桜井さん、またねー」

「あ、うん!また…!」


行っちゃった。。。


「龍弥…想汰くんにあんまり色々勝手に聞かないで」

「なんでだよ」


さっき田村くんが来てなかったら、私は止めれてたのだろうか。



「話したくないこともあるかもしれないでしょ?こっちから無理矢理聞くことじゃないよ」


「…もういい」

そう言って龍弥も食堂を後にした。



「亜紀、なんかごめんね。変な空気になって」

「ううん。ただ、なんか一波乱ありそうな気がするだけ」


「なにそれ!そんなの起こんないよ!」



そうだよね、、想汰くん。。。