「あ、えっと…なにしてるかなと思って…」

まさかのドアが開くという展開にしどろもどろ状態。


すると、想汰くんがクスッと笑った。


「偶然ですね。ぼくも先輩なにしてるかな?と思って部屋に行こうと思ってました」

そう言って微笑む想汰くんがかっこよすぎて見惚れてしまう。


「寝るまで話します?」

「うん!いいの!?」

また想汰くんが笑う。


「当たり前でしょ。てか先輩声大きいです。お母さんたちに怒られますよ」


笑う時に手を口に当てる仕草。

全てがすき。




ひとつ空いていた部屋。
今はもう大好きな想汰くんの匂いに包まれている。
それも今日まで。


明日からも変わらず会えるのに
なんでこんなに寂しいんだろう。


想汰くんはどうなんだろう?


「先輩、今度の土曜日ちゃんと空けてます?」

「もちろん!!」

その日はわたしの誕生日で想汰くんがお祝いしてくれる。


「前日の金曜日、先輩バイトだよね?」

「うん」

「バイト終わり迎えに行くから会ってくれます?」


そんなの聞くまでもない。

「もちろんだよ!!」


「…………」

黙る想汰くん。

気づけばわたしは興奮のあまり、想汰くんに近づき過ぎていた。
目の前に想汰くんの顔が!!


「ご、ごめん!!近づき過ぎてっ…ひゃっ」

急いで離れようとしたら腕を引っ張られて想汰くんの腕の中。


「なんで離れるんですか」

想汰くんの鼓動が聴こえる。
すごく心地よくて安心する。



「こうしてまた先輩を思いっきり抱きしめることが出来て嬉しい。ギブス取れてよかったです」


わたしも嬉しい。

でも

寂しい。



「金曜日ね、帰りが遅くなっても大丈夫かお母さんたちに聞いててもらえますか?」


ドキンッ

その言葉になんだかすごくドキドキする。


わたし、なに考えてんだ!?



「もし…反対されても想汰くんと一緒にいるから大丈夫」


「あはは!それは嬉しいけど、反対されたら早く帰らなきゃですね」



なんでそんな余裕そうなの?

わたしばっかり必死なのかな…。



ちゅっ

唇が一瞬触れた程度の軽いキスをした。



目をパチクリさせてる想汰くん。



わたしはというと、自分でもわかるぐらい顔が熱い。
絶対真っ赤だ。


想汰くんの腕の中から出ようとするけど、さらにギュッと抱きしめられて出られない。



「なに離れようとしてんの」

だっだって…恥ずかしくて…


「足らない。もっかいして?先輩」


ドキッ

心臓がものすごい速さで動く。



「ねぇ先輩。…明日からここに龍弥さんが来るんだよね」


わたしの頬を優しく撫でる手。



「…浮気したら許さないからね?」

優しい手とは裏腹に、少し鋭い目つきでわたしを見る想汰くん。




ムッ

「バカにしてるの?」

なんか腹立ってきた。



「へ……?」

すっとんきょんな声を出す想汰くん。



「するわけないじゃんか。わたしのこと、そんな軽い奴だと思ってるの?」



ぎゅっ

「ごめんね先輩」

想汰くんがさらに強くわたしを抱きしめる。



「軽いとか思うわけないから。ただぼくが不安なだけ。先輩可愛いからモテるだろうし」


えっ!?

「かっ可愛くなんかないし!!それなら想汰くんの方がかなり心配だし!!かっこよくてなんでも出来てっ…んがっ」


手で口をおさえられた。



「可愛いよ。世界で1番可愛い。顔も性格も全部」


ドキンドキン…
想汰くんの手がわたしの唇に触れる。


こんなことを言ってくれるのは想汰くんだけ。



「先輩が浮気なんかしたら…ぼく死ぬと思う」


こんな言葉を微笑みながら言う想汰くん。
笑える言葉じゃないのに。
重くてたまんない言葉なのに。
微笑むなんておかしいのに。


それでも
そんな言葉にも
表情にも
ときめいてしまうわたしは



「大丈夫。そんなことありえないから」


完全に沼に落ちて、這い上がることは二度と出来ない。



それでもいい。



あなたのそばにいれるなら。