アイツの前で先輩が、たまに見たことないような表情をするから苛立ちが止まらない。
「想汰〜!!」
「柳瀬(やなせ)、なに?」
同い年で同じ学部の男子。
「腕、どうなんだよ」
「あぁ、、今日この後病院でもしかしたらギブス取れるかも」
「マジで!!」
なんだ?すげー嬉しそうに笑って…
「リハビリとか無事済んだら、また一緒にバスケしよーぜ!おまえ強ぇから色々教えてくれよ!」
夏休み前にもバスケの試合に誘ってきた奴。
「だから、ぼくはもうバスケはしないって」
「なんで?おまえバスケ好きだろ?」
これ以上はダメだ。
「悪い柳瀬、ほか当たってくれ」
ぼくはその場を後にした。
これ以上、ぼくに踏み込んでくるな。
《1年のくせに生意気なんだよ》
《顔しか取り柄ねぇくせに》
人と関わったって…ロクなことないんだ。
「想汰くん!!」
廊下を歩いていると、詩先輩に会った。
「今日何時から病院?バイトないからついて行っていい?」
そう、ぼくには先輩だけでいい。
先輩だけがぼくにとっての全てなんだ。
「ありがとうございます。嬉しいです」
えへへと嬉しそうに笑う顔がたまらない。
ふわっー・・・
「…先輩、もしかして龍弥さんといた……?」
「え?あ、うん。2限空きだったから自主勉してたら龍弥がやってきたの」
ふーん
「先輩、ちょっと来て」
階段をのぼり、屋上の扉の前にやってきた。
「想汰くん…?」
「どっか触られた?髪とか腕とか…」
ふにっ
先輩の唇に触れる。
「こことか」
先輩の顔が一気に赤くなった。
「わっ!こんなとこ、触られるわけないよ!!」
「ふーん、じゃあここは?」
今度は耳を触る。
「ひゃっ…」
「先輩…龍弥さんの香水の匂いさせといて、嘘は通じませんよ?」
「嘘なんかつかないよ!」
少し涙目でぼくを見る。
その表情がさらにぼくに余裕をなくさせる。
「そっか」
先輩の耳を甘噛みした。
「やっ…」
先輩の口から甘い声が出る。
「こんな風に近づかないと香水の匂いとかうつんないと思うけど?」
龍弥(アイツ)への苛立ちがさらに拍車をかける。
あえて口にキスはせず、耳や首元にキスを落とす。
「想汰くん…人来ちゃ…」
「ここなら誰も来ないよ」
先輩は壁にもたれながら、ゆっくりと座り込む。
「立てなくなった?もっとして欲しいの?」
「なんで…そんな意地悪言うの…?」
ゾクッ
涙目でそう言う先輩の表情がたまらなくてゾクゾクする。
そう、ぼくしか見れない先輩の表情(かお)
龍弥(アイツ)になんか見せない表情(かお)
「アイツの匂いさせてる先輩が悪いんだよ」
消したい
今すぐに
ぢゅっ
「あっ…」
鎖骨にキスマークをいくつか付けた。
「想…汰くん…」
ヤバイ…このまま抱きたい。
でも、この腕だと…
それに
「ほんとのこと言う気になった?」
もっとちゃんとした場所で先輩を抱きたい。
だから我慢しないと。
「なにも…嘘ついてないから」
わかってる。
先輩が嘘つくような人とは思ってない。
先輩の可愛い服を捲り上げて、腰からゆっくりと上に向かって体を撫でる。
「や…あ」
そしてブラの上から胸を触った。
「そ…うた……」
ゾクッ
ヤバイ…もうほんとに止めないと
先輩を大事にしたいのに
ブラの中に手を入れようとした時
「ごめ…龍弥に髪…触られたから…」
ピタッ
手を止めて、先輩の服を元に戻した。
「髪…だけ?」
「それだけだよ!今思い出した」
「抱きしめられたりとかは?」
「あ、あるわけないよ!!」
まだ涙目。
そんな目で必死に否定をする先輩。
ごめんね、そんな先輩もかわいいって思ってしまうようなぼくなんだ。
「龍弥に髪触られたこと…なにも気に留めてなかったから忘れてたの…だって……」
先輩がぼくの首の後ろに腕を回して抱きついた。
「こうしてドキドキしちゃうのは…想汰くんだけだから」
あぁ、やっぱりこの人は危険な人だ。
「先輩…ぼく必死で我慢してるんすよ?」
「我慢しなくても…いいよ?」
ぼくが攻撃してるように見せかけて、結局先輩に打ちのめされる。
「んっ…」
ずっと避けてた口へのキスをした。
「もっと違う場所で先輩を抱きたいから」
ほら、また顔を赤くした。
ぼくのひと言ひと言に表情を変える先輩が可愛くてたまらない。
「ぼくの負けです」
「え?どういう意味…んっー…」
唇が腫れるんじゃないかってぐらい、キスをしたと思う。
絶対、誰にも譲らない。
手放さない。
ぼくの邪魔をする奴は許さない。



