「お母さん、決める前に相談ぐらいしてよ」

「俺が詩に黙っててって言ったんだよ。俺から言いたかったから」


先に聞けてたら…なにか違う方法も考えられたかもなのに。


わたしは想汰くんを見る。


「大丈夫ですよ」

わたしの思ってることがわかったのか、にこっと笑ってそう言った。




「龍弥くんよかったら上がって。お母さん、ちょっと買い物に出るから3人で話しでもしてて」


えっ!?


「お母さん!買い物ならわたし行くよ!」


「なに言ってんの。龍弥くんせっかく来てくれたんだし、色々話しでもしなさい」


いや、、、3人て、、、、




しーーーーーーーーーーん



ほらね!
思った通りカオスな状況じゃんか!!


想汰くん全然話さないし、龍弥はスマホ触ってばっかだし!!

なんだよこれは!!




「龍弥、なんでウチに泊まるの?」

みんなに飲み物を配り、痺れを切らしてわたしが口を開いた。



「俺が大学ついていった時に会った教授のそばで1ヶ月ほど勉強させてもらうんだ。まぁほんとは色々手伝うって感じに近いけど」


そうなんだ、、

「別の大学なのにそんなこと出来るんだね」


「ああ、実はー…「単位互換制度とかありますもんね?」


想汰くんが龍弥の言葉を遮った。


単位互換制度?


「お、彼氏さんよく知ってるねー。そうそう。俺が行ってる大学と詩の大学がその制度使える大学でさ。教授の元で勉強してみたかったから嬉しくて」


そう言って笑顔で話す龍弥は本当に嬉しそうで、そしてそんな素晴らしい目標を持ってここにやってきたのに断ることなんて出来ない。


「俺の母親と詩の母さん、たまに連絡取ってたみたいでさ。俺が今回のこと話したら詩が通ってる大学ってわかってそっからこうなった感じ」


なるほど、、

てか、まさかおばちゃんとお母さんがまだ連絡を取ってたなんて。

「連絡取ってるなら教えてほしかった」


ぼそっとそう言うと、龍弥が近づいてきた。


「会いたかったとか?」


なっ!!


グイッ

後ろから引っ張られた。


「近いです」

バランスを崩した体は想汰くんにもたれかかる。



「違うよ!ただ、一応幼なじみだしずっと会えてなかったし、元気とか知れたら嬉しいじゃんか!」

わたしは慌てて龍弥の発言を訂正する。



「はいはい。詩らしいね」


「昔は泣き虫だったのに…」  

「それ言うの禁止な!」


昔の面影は少なくなってるけど、笑ったりするとやっぱり昔の龍弥が蘇ったりする。



「あ!来週から泊まるって…想汰くんもいるのに」

「大丈夫ですよ」


後ろから声がする。


「もうギブス取れる予定だし、ぼく自分の家に戻りますから」


わたしを見て優しく笑ってくれてるんだけど…
なんだろ
この感じ。


わたし、…なんかショック受けてる。


「戻っちゃうの…?」

「いつまでも甘えてちゃダメですからね」

「そ、そっか。そうだよね」


あれ
すごく寂しい。



もしこのままー・・・
「ただいまー」

お母さんの声にハッとする。


わたし、、、今なにを思った!?
最低なこと思ったよね!?



「先輩?」

俯くわたしを伺うように覗き込む想汰くん。



「なんでもないよ!ってか!龍弥いつまでいるの!?」

「あのさ、俺への扱いマジひどくね?」

「いきなり来るのが悪い!」



わたし

最低だ。