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「おはよ」


「…なんでここにいるの?」


朝、狩谷くんと家を出ると何故か龍弥がいた。


「朝から冷たいなぁ〜」

「なんでウチを知ってるのか聞いてるの」


龍弥が引っ越したのはわたしがここに越してくる前のこと。
昨日は偶然会ったけど、なんでウチの場所知って…


「てか、ふたりって一緒に住んでんの?詩の実家だよね?」


「先にわたしの質問に答えてよ」

「…………」

狩谷くんはわたしの隣で黙ったまま。



「あとで話すよ。大学までついてっていい?」

「なんで!?」

「着いたらわかるから」


いや、意味わかんないよ!!


無理矢理ついてくる龍弥のせいで
わたしの両隣に狩谷くんと龍弥がいるという
なんともいえない構図が出来てしまった。


「狩谷くん、ごめんね?」

「なんで先輩が謝るの?全然いいですよ」

「彼氏くん、昨日も思ったけどほんとイケメンだね〜」

「………」


無視!!
狩谷くん、龍弥の言うことには普通に無視してる!!


「無視とかやめてよー」

「別に無視してません。答える気がなかっただけです」


いや、それを世間一般的には無視と言うんですよ。

あぁ、、、
なんだか胃が痛い。



カオスな空気のまま、なんとか大学に着いた。


「龍弥、ここまでついてきてどういうつもり?」

「ん〜実はさ…」
「あっいたいた!戸倉(とくら)くーん!」


ん??
向こうの方から龍弥の苗字を呼ぶ声が聞こえた。


「あっ先生〜!おはようございます」

その声の正体は法学部の教授で、学部が違うけど有名な先生だから知っていた。
その有名な教授が龍弥を呼んで、龍弥もそれに応えてる。


知り合い???

「悪いね、無理を言って」

「とんでもないです。ご一緒出来て光栄です」


龍弥と教授は軽く話をして、教授が先に去っていった。



「龍弥、教授と知り合い?」

「前に俺の大学に講義で来てくださって、その時俺の論文を聞いてくれたんだよ。そしたら気にいってくれてさ。憧れの教授だったから嬉しくて」


わぁ・・・


「龍弥!!すごいね!!!」


わたしは思わず大声で叫んでしまった。


周りからジロジロ見られる始末。。



「ご、ごめん…」


「あはは!!」

龍弥が急に笑いだした。


「詩、相変わらずおもしれーな」

龍弥がわたしに近づいて頭を撫でた。


「自分のことのように喜んでくれて、すげー嬉しい。ありがと」

あ、今の笑顔…
昔の龍弥の面影があった。


「先輩、授業遅れますよ」


ハッ!!ほんとだ!!


狩谷くんと龍弥をふたりきりにするのがなんだか不安だったが、仕方なく授業に向かった。




「じゃ、ぼくも行きます」


「ねぇ」

「はい」



「詩って可愛いよね。昔からマジ変わってないっていうか素直っていうか」

「可愛いのは十分知ってます」

「はは!そっか。きみも面白いね」


うざったらしい前置きとかいらないし。


「言いたいこと言わないんなら、もう行きます」


「わかったって」


またやることが出来た。




「詩、俺にちょーだいよ」




今すぐにでも排除しなきゃいけない。



「…ははっ……」


ぼくの邪魔をする奴はどんな奴でも許さない。



「わかってなさそうなんで教えてあげますね?それを決めるのは詩先輩なんですよ。ぼくらじゃない」


龍弥に近づく。



「そんなこともわかってねぇのに、くだらないこと言ってんじゃねぇよ」

そう言ってその場をあとにする。



「なぁ」



足を止めて振り向く。



「ご忠告どーも♪」


ぼくの挑発なんて全く気にしてないような笑顔で手を振ってくる。


その余裕に、すでにぼくは負けてしまってるんだ。