ヴーッ
授業中、詩先輩からメッセージがきた。
《授業中にごめんね!よかったらお昼ご飯一緒に食べない?》
ヤバ。
嬉しくて顔がニヤける。
はい、と送るとすぐに返事が返ってきた。
《やったー!!実はね、お弁当持ってきてるんだ!あっ作ったのはお母さんだよ!》
なに、この可愛い文面。
授業なんか一切頭に入ってこない。
あ〜早く昼休みになんないかな。
先輩に会いたいな。
ふとスマホの日付が目に止まった。
今日、もう9月24日か。。
詩先輩の誕生日が11/1だから、あと1ヶ月と少し。
そろそろ誕生日とか聞かないと祝えないな。
血液型だって靴のサイズだって、全部知ってるけど。
そういや…
先輩はぼくになにも聞いてこないな。
知りたい とかないのかな。
左腕を見る。
先輩の誕生日までにある程度治るかな。
〈んで?今回の件はどこまでが計画で、どこからが事故なわけ?〉
田村の言葉が頭をよぎる。
ぼそっ
「腕がこうなるのは、計画じゃなかったかな」
それと、あそこに先輩が来てくれたことも…か。
次の授業の移動中
「想汰!!」
ぼくを呼ぶウザイ声が聞こえた。
「ユキ…なに?」
「想汰!なんでユキよりあんな人選ぶの!?」
ユキの大声のせいで周りから注目の的になってしまっている。
めんど
「ちょっとこっち来て」
誰もいない教室に入った。
「あのさ、ぼく言ったよね?大切な人が出来たからって」
「でもでも!ユキの方が良い女だもん!」
なに言ってんの?
どこから来んのその自信。
詩先輩に敵うわけないだろ。
比べるのも失礼だ。
「それに…ヨシキが言ってたもん…。想汰のしたことを話せばあの女が想汰から離れるって」
は???
「なにそれ?ヨシキって小田原たちのことだよな?」
「想汰、なんか…怖いよ」
「言え。アイツらが先輩になにを話せって言ったんだよ!?」
なんであの場所に先輩が来たのか。
謎だったことが少しずつ解像度を上げて鮮明になっていく。
「ヨ、ヨシキが…想汰が殴られてる写真送ってきて。。それ見せて想汰がヨシキたちにしたことを話せばあの女が離れるって言ったの。だから…話した」
あー
そういうこと。
じゃあ先輩は小田原たちが大学(ここ)を辞めた理由、もうわかってんだ。
計画狂わせやがって
「ウザ」
「そ、想汰…ほんとに…ごめん。。」
泣き崩れるユキ。
もちろん、これっぽっちも情なんてわかない。
「こんなことなら…ユキもあの女殴れば…邪魔さえ入らなければ…」
「今…なんつった?」
殴る…??
「ムカつき過ぎてあの女殴ってやろうと思ったの!!そしたら知らない男が邪魔してきて!!なんでユキばっかりこんな…ひゃっ!!」
気づけばぼくはユキの胸ぐらを掴んでいた。
「次…もし同じことしてみろ……大学(ここ)にいれないようにするからな」
「あ…想汰……ごめ…なさい」
ぼくはユキから手を離した。
床に座り込んで泣き続けるユキ。
〈こんなこと繰り返してたらいつかもっとヒドイ目に遭うぞ〉
また田村の言葉が頭をよぎる。
いや、ヒドイ目に遭わせてるのはぼくだ。
ぼくの勝手な自己中な計画にユキを巻き込んだ。
そしてその結果、詩先輩に危害が加わりそうになった。
詩先輩になにかあるなんて…そんなことあってはいけない。
「もう関わらないでくれ」
泣き続けてひと言も話さなくなったユキ。
ぼくが
ぼくが巻き込まなければ、ユキはこうして今泣くこともなかったんだろう。
ヤバイ
感情がおかしい。
こんなこと、前まで考えなかったのに。
面倒くさい。
ぼくは先に教室をあとにした。
泣いているユキを放って。
教室のドアを閉める直前
「ごめん」
ぼくは聞こえるかどうかわからない程の声でボソッと言った。
最低だ。
それでも先輩をぼくのものにしたいんだ。
そして
〈田村先輩って意外に偽善者なんですね〉
違う。
偽善者なのも ぼくだ。
左腕を見る。
こんなもんじゃ…自分のやってきたことへの罰にもなんないよ。



