先輩はぼくのもの


「そうですか。でも、あなたに言われる筋合いはないです。ぼくと先輩のことなんで」


ぼくはおかしい。


「まぁそうだね。じゃ、彼氏くん来たし俺行くわー」


詩先輩が倒れたことはヤバイぐらい心配なのに
でも
その原因がぼくのことで悩んでってわかって

喜んでしまってる。



もっと
もっと
ぼくで悩んでぼくのことでいっぱいになればいい。



それと同時に

「田村くん、ここまで運んでくれてありがとう」


なんでコイツがその理由を知ってるんだと
吐きそうなぐらいの苛立ちが襲ってくる。


「…そこまで送ります」


ふたりで保健室を出た。



「詩先輩に触れたんですか?」


「触れたっつーか、抱き抱えたかな。喋ってたら急にフラついてさ」


ガシッ
気づけば田村の胸ぐらを掴んでいた。


「なに?狩谷くん?」

コイツのこの余裕そうな表情がさらに苛立ちを大きくする。



「…いえ、別に。先輩を助けてくださってありがとうございます」

田村から手を離した。



「ねぇ狩谷くん。きみの“ほんとのかお”ってどんなの?」 

「は…??」

今度は田村がぼくに近づいてくる。


「すげー興味あるんよね。きみの本性ってーの?ハイスペでイケメンでスタイル良くて…そんなきみが拗らせている“もの”がさ」



へぇ〜。
やっぱりコイツ消さなきゃだわ。


「なんの話かよくわかんないんですけど」

「俺のこと、消したいとか思ってんじゃねぇの?」


……ふーん


「…うざ」


「あ、本性出た♡」


「別に隠してるつもりはないですよ」

「そう?桜井さんの前で必死に良い男ぶってんじゃん」


「隠してるんじゃなくて、好きだからそういたいだけですよ」


「へぇ〜。桜井さんのこと、大好きなんだねぇ」

「えぇ。話はそれだけですか?じゃあ…」
「北村が浮気した相手ってさ、きみの友達?」


ドクッー…


「いつだっけな…あのカフェの子ときみが仲良さそうに話してるの見たことあって」


「ぼくを脅してるんですか?」


「別に?ただの世間話のつもりなだけだけど」


ぼくの計画を崩していいのは詩先輩だけ。




「友達ってか、あのカフェに通ってる間に仲良くなっただけです。まさかあの子が北村先輩の浮気相手とは思わなかったですけどね」

「そっか。その通ってたカフェに初めて行くふりをして桜井さんを連れて行ったんだ?」


邪魔をする奴は許さない。



「ふ…回りくどいですね。ぼくは、カフェの子に北村先輩の写真を見せて紹介しただけです。“この人がきみに興味あるみたいだよ”って。後はあのふたりが自分たちで決めたんです。ぼくは関係ない」



「うーわ。エグイね、狩谷くん」


「田村先輩も…詩先輩の前から消されたいですか?」



どんな奴も、邪魔する奴は消してやる。



「おまえみたいな奴から桜井さんを守るよ」



「…無理だよ」


そう言ってぼくは保健室へ戻った。