「…ぶはっ!やっぱ先輩おもしれー」
ほら
こうしてたまに出る、敬語じゃなくてタメ口で、そして丁寧語でもない“素”の狩谷くん。
今までと違う狩谷くんひとつひとつにドキドキしっぱなし。
「ごめん…。あのね、楽しいよ。すごく楽しい」
「じゃあなんでそんな感じなんですか?」
ですよねー。
「いやえっと…」
こんなこと言ったら余計引かれるんじゃないかな。
「言わないんなら帰ります」
出たっ!Sッ気!!
「その…もっと先輩らしくしたいのに出来なくて…わたし付き合う前の方がちゃんと先輩だったんじゃないかなって思ったりしたら…」
へ・・・?
わたし、キスされてる?
お土産屋さんの前で。
ドーンッ!!
急いで狩谷くんを突き飛ばした。
めっちゃ見られてる。。。
「先輩恥ずかしい?ぼくは全然恥ずかしくないよ」
突き飛ばした狩谷くんが近づいてくる。
「だってぼくの大好きな彼女だから。余計な虫寄ってこないように、みんなに彼女だって見せびらかしたい」
ドクンッ
真っ直ぐな、一度捕えられたら逃げれないような視線。
「さっきも言いましたよね?歳なんか関係ないって。先輩はぼくの彼女なんです」
「わかるまで…キスする?ここで」
お手上げです。
「……十分わかったから…ごめんなさい」
「なら、行きましょ」
手を繋いでお土産屋さんに入った。
チラチラ見られたのは言うまでもない。
———————————
「じゃまたね、先輩」
「うん、授業頑張ってね」
夏休みも終わり大学が始まった。
「ちょっと〜相変わらず仲良いね、あんたたち」
「亜紀、おはよう」
亜紀に報告しなきゃ。
1限目中に付き合ってることを報告。
「えーーっ!!」
「亜紀!声大きいって!」
「そこ!!うるさくするなら出て行きなさい」
「「すみません…」」
先生に頭を下げて引き続き授業を受けさせてもらった。
「いいなぁ〜年下彼氏じゃん」
「狩谷くんすごくしっかりしてるから年下に感じないんだけどね」
そう、春に出会った時から不思議と年下に感じない。
「まぁ、あんたたちがくっつくのは時間の問題と思ってたけど」
「え?なんで?」
「狩谷くんが詩を好きなのは見ててなんとなくわかってたし」
うそっ!?
ほんと!?
「あからさまに嬉しそうにしちゃって」
「そ、そんなことないよ!」
「おまえらー出ていくかー」
ご、ごめんなさい〜!!!!!
・・・・・・・・・・・・
「あ、桜井さん。これさっきの忘れ物」
「田村くん、ごめんね!わざわざありがとう」
今日は3限の時間は空き時間。
2限目の授業で教室に忘れてきたノートを隣の席だった田村くんが食堂まで届けてくれた。
「なんか次の試験むずそうだよ」
「やっぱり?あの先生意地悪だよね。範囲外出すもん」
田村くんは2年生になってこの授業が一緒で仲良くなった同い年の男の子。
女の子みたいな可愛い顔で背も170ぐらいの子。
「あれ?田村くんも今空き?」
「うん。ってか正確に言うと休講になった」
「そっかー」
気さくで話しやすい人。
「やっぱ桜井さんといると楽だわー」
「なにが?」
「んー、なんとなくね」
???
「そういえば桜井さんてさー…」
グイッ
「わっ!」
急に後ろから腕が回されて身体が後ろに倒れた。
「なにしてんすか、先輩」
この声はっ!!
「狩谷くん!?」
急いで後ろを向く。
「はぁー…目を離したらすぐ虫を呼び寄せるんだから」
はい!?
てか、虫ってなに!!??
呼んでないけど!!??
「あー、うわさの“狩谷くん”だ」
「うわさ??」
狩谷くんがなんのうわさ???
「なんですか、うわさって」
ギロッと田村くんを睨む狩谷くん。
目が怖いってー!!!
「1年生のイケメンでハイスペな子って俺らの学年でも人気だよ」
「…あっそーですか」
うーわ
ビックリするぐらい興味なさそうな返事。
自分から聞いたくせに。



