先輩、相変わらず働き者だなぁ。
去年の夏もバイト掛け持ちしてたよね。


今年は試食販売か。

スーパーまであとをつけて、そして少し離れた角から詩を見つめる。(ほぼ監視)


なんであっちの女が果物で、先輩が焼肉のタレなんだよ。
逆だろ、普通。


先輩、頑張ってるのになかなか人が集まんないなぁ。



「ねぇ」

「はっはい!」

主婦?らしき人に声をかけた。


「ぼく、今売上の統計取ってるんですが…あそこでやってる試食販売…よかったら試食だけでもしてもらえません?お姉さんなら聞いてくれるかと思って声かけました」


「もっもちろん!!」


ほかにも、女子高生たちやおじさんにも声をかける。


自分の顔が先輩のために役立って嬉しい。

ぼくはこの自分の顔が…ずっと嫌だった。


商品が売れて嬉しそうな先輩の顔。
あぁ、かわいい。
かわいい。


ほんとはぼくが全部買いたいのに。
ここで出て行ったら水の泡だもんね。



【弟】

ぼくが弟みたいかぁ・・・

そんな気持ち、すぐに消してあげるよ。




あ!先輩に馴れ馴れしく話しかけてる男がいる!
あ〜出て行って殴りたい。
先輩に話しかけんな。


商品は売れてほしい
だけど、詩と話してほしくない
その葛藤を18時まで続けた想汰だった。
(※何回か警備員に声をかけられています)