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あー、えげつないほど気まずい。
何回繰り返すんだ、これ。
今日は花火大会。
浴衣姿の女の子がたくさん。
そしてカップルもたくさん。
「パンいかがですかー?」
そしてわたしは店頭販売中。
「先輩、暑いから交代しましょ」
ドキッ!
「いや大丈夫だから!狩谷くんは中でよろしく!」
今は…距離がほしい。
相変わらず、狩谷くんはあれからも普通で意味がわかんない。
だからこそ、冷静になりたい。
「熱中症なりますから」
腕を掴まれた。
ブワッと身体になにかが走った。
「離して…!」
思わず振り解いてしまった。
こっちを見て呆然とする狩谷くん。
「…わかりました」
あ…親切にしてくれたのにヒドイことしてしまった。
「ごめ…」
「ぼくも一緒に販売します」
へ???
「あれ?狩谷くんじゃん!パン売ってるの?欲しいー!!」
「狩谷くん、何時まで?この後花火デートしようよ♡」
わたしは横でパンを袋に入れていく。
さっきまでが嘘のように、凄まじい速さでパンが売れていく。
さっきまではなんだったんだ。
「想汰!!ここで働いてたの!?」
あっこの子は…!
「連絡返してよ!なんで会ってくれないの!?」
ユキちゃんだ。
うげー。みんな見てるよ・・・
「今仕事中だから。そういうのやめて」
すごく冷たい目。
見たことない狩谷くんの表情だ。
「あの…今仕事中なんで。迷惑です」
「は??あんたなによ」
こわっ
矛先がわたしに向いた。
でも、ここは先輩として後輩を助けなきゃ。
「狩谷くん、今仕事頑張ってくれてるのでこういうのはやめてください」
グシャッ
ユキちゃんが販売のパンを1つ握ってわたしにぶつけた。
「ユキ!いい加減にしろ!」
プチンッ
わたしの中でなにかが切れた。
「今…なにした?店長が頑張って焼いたパンをこんな粗末に…これ以上キレる前に早くどっか行って…」
「は?うるさいってば…「食べ物粗末にするなって言ってるの!!」
周りもユキちゃんも、もちろん狩谷くんも凍りついてる。
そして我にかえるわたし。
「…もういい!」
ユキちゃんはなんとか帰ってくれた。
はー…やってしまったわたし…
「ぼくのせいですみません」
「えっ狩谷くんはなにも悪くないよ!」
「先輩…かっこよかったです」
さっきの冷たい目はどこへやら
優しく微笑んでくれた。
ーーーーーーーーー
「予定より早く完売したし、ギリギリ花火の終わりがけは見れるかもだから行っておいで」
「でも片付けが」
「あとちょっとだし俺だけで出来るから」
店長が気を遣ってくれて、20時過ぎに上がらせてもらった。
「「・・・・・・」」
狩谷くんとふたりで。
「じゃ、またね狩谷くん」
「はい?花火行かないんすか?」
少し遠くの方で花火の音が聞こえる。
もうちょっと近づけば見えるんだろうな。
「いや、ふたりで…?」
「ほか誰かいます?」
だって、この前あんなことあったし…
「ぼく、実は花火大会って行ったことないんですよね。…なんか興味あります」
そうなんだ…
「でも先輩が嫌ならいいです。帰りましょ」
そんなこと言われたら、、、
断れるわけないじゃんか。
「狩谷くん、走れる?」
「はい!?」
「花火20時半までだからあとちょっとだし。走るよ!」
無意識に狩谷くんの手を掴んで走ってた。
「はぁはぁ…着いた…」
「はぁ…ここ、人少ないですね」
そう。ここはわたしがこっちに引っ越してきてから見つけた穴場スポット。
「少し花火が見えにくいんだけどね。でも、人もいなくてゆっくり見れるし好きな場所なの」
「いいですね、ここ」
ドーンッドーンッと、花火が上がる音が心地良い。
「綺麗ですね、花火」
そう言って花火を見る狩谷くんの横顔がとても綺麗で、わたしはそっちに見惚れてしまう。
「さっきの先輩…ほんとにかっこよかったです。先輩のあーいう真面目なとこ、好きです」
ドキンッ…
またそうやって思わせぶりなことを言う。
話変えなきゃ。
「ここ秘密の場所だよ」
「秘密ならぼくに教えちゃダメじゃないですか」
「あ、ほんとだ」
あははと笑ってしまった。
「狩谷くんだけだよ、教えたのは。ふたりの秘密ね」
カシャンッ
柵に身体が当たった。
それは狩谷くんによって、柵に追い詰められたから。
「先輩、思わせぶりが上手いですね」
「なにそれ…」
それはあなたでしょって言いたくなる。
柵と狩谷くんに挟まれた。
「ほんとにぼくと先輩だけの秘密なのかな?」
花火の音でも消せないんじゃないかと思ってしまうぐらい、わたしの鼓動が大きく鳴る。
「そ、そうだよ。ほかの人に教えたことないもん」
「へぇ〜。嬉し」
いつもの優しい目じゃなくて、少し意地悪な強気な目でわたしを見る。
会うたびに知らない狩谷くんの一面を知っていく。
「先輩、ぼく嘘は嫌いですよ?」
「嘘?なに言って…」
「ほかの人にここを教えたら…知らないからね?」
ドクッ
まただ…。少し怖く感じる狩谷くん。
だけど、身体は動かなくて目も逸らすことが出来ない。
ドーーーンッ
一際大きな音が聞こえた。
「あっ…きっと最後だよ」
せっかくの初めての花火大会
ラストも見てほしい。
「綺麗ですね…」
狩谷くんがわたしから少し離れる。
「今日はこれで満足してあげます」
わからない、この子が。
知りたいのに、知っていくたび知らないところがまた増えて
それの繰り返し。
一歩足を踏み入れたら最後
後戻りが出来ない気がする。
そんな、暑くて花火が綺麗で
危険な予感に満ちた夏の夜。
あー、えげつないほど気まずい。
何回繰り返すんだ、これ。
今日は花火大会。
浴衣姿の女の子がたくさん。
そしてカップルもたくさん。
「パンいかがですかー?」
そしてわたしは店頭販売中。
「先輩、暑いから交代しましょ」
ドキッ!
「いや大丈夫だから!狩谷くんは中でよろしく!」
今は…距離がほしい。
相変わらず、狩谷くんはあれからも普通で意味がわかんない。
だからこそ、冷静になりたい。
「熱中症なりますから」
腕を掴まれた。
ブワッと身体になにかが走った。
「離して…!」
思わず振り解いてしまった。
こっちを見て呆然とする狩谷くん。
「…わかりました」
あ…親切にしてくれたのにヒドイことしてしまった。
「ごめ…」
「ぼくも一緒に販売します」
へ???
「あれ?狩谷くんじゃん!パン売ってるの?欲しいー!!」
「狩谷くん、何時まで?この後花火デートしようよ♡」
わたしは横でパンを袋に入れていく。
さっきまでが嘘のように、凄まじい速さでパンが売れていく。
さっきまではなんだったんだ。
「想汰!!ここで働いてたの!?」
あっこの子は…!
「連絡返してよ!なんで会ってくれないの!?」
ユキちゃんだ。
うげー。みんな見てるよ・・・
「今仕事中だから。そういうのやめて」
すごく冷たい目。
見たことない狩谷くんの表情だ。
「あの…今仕事中なんで。迷惑です」
「は??あんたなによ」
こわっ
矛先がわたしに向いた。
でも、ここは先輩として後輩を助けなきゃ。
「狩谷くん、今仕事頑張ってくれてるのでこういうのはやめてください」
グシャッ
ユキちゃんが販売のパンを1つ握ってわたしにぶつけた。
「ユキ!いい加減にしろ!」
プチンッ
わたしの中でなにかが切れた。
「今…なにした?店長が頑張って焼いたパンをこんな粗末に…これ以上キレる前に早くどっか行って…」
「は?うるさいってば…「食べ物粗末にするなって言ってるの!!」
周りもユキちゃんも、もちろん狩谷くんも凍りついてる。
そして我にかえるわたし。
「…もういい!」
ユキちゃんはなんとか帰ってくれた。
はー…やってしまったわたし…
「ぼくのせいですみません」
「えっ狩谷くんはなにも悪くないよ!」
「先輩…かっこよかったです」
さっきの冷たい目はどこへやら
優しく微笑んでくれた。
ーーーーーーーーー
「予定より早く完売したし、ギリギリ花火の終わりがけは見れるかもだから行っておいで」
「でも片付けが」
「あとちょっとだし俺だけで出来るから」
店長が気を遣ってくれて、20時過ぎに上がらせてもらった。
「「・・・・・・」」
狩谷くんとふたりで。
「じゃ、またね狩谷くん」
「はい?花火行かないんすか?」
少し遠くの方で花火の音が聞こえる。
もうちょっと近づけば見えるんだろうな。
「いや、ふたりで…?」
「ほか誰かいます?」
だって、この前あんなことあったし…
「ぼく、実は花火大会って行ったことないんですよね。…なんか興味あります」
そうなんだ…
「でも先輩が嫌ならいいです。帰りましょ」
そんなこと言われたら、、、
断れるわけないじゃんか。
「狩谷くん、走れる?」
「はい!?」
「花火20時半までだからあとちょっとだし。走るよ!」
無意識に狩谷くんの手を掴んで走ってた。
「はぁはぁ…着いた…」
「はぁ…ここ、人少ないですね」
そう。ここはわたしがこっちに引っ越してきてから見つけた穴場スポット。
「少し花火が見えにくいんだけどね。でも、人もいなくてゆっくり見れるし好きな場所なの」
「いいですね、ここ」
ドーンッドーンッと、花火が上がる音が心地良い。
「綺麗ですね、花火」
そう言って花火を見る狩谷くんの横顔がとても綺麗で、わたしはそっちに見惚れてしまう。
「さっきの先輩…ほんとにかっこよかったです。先輩のあーいう真面目なとこ、好きです」
ドキンッ…
またそうやって思わせぶりなことを言う。
話変えなきゃ。
「ここ秘密の場所だよ」
「秘密ならぼくに教えちゃダメじゃないですか」
「あ、ほんとだ」
あははと笑ってしまった。
「狩谷くんだけだよ、教えたのは。ふたりの秘密ね」
カシャンッ
柵に身体が当たった。
それは狩谷くんによって、柵に追い詰められたから。
「先輩、思わせぶりが上手いですね」
「なにそれ…」
それはあなたでしょって言いたくなる。
柵と狩谷くんに挟まれた。
「ほんとにぼくと先輩だけの秘密なのかな?」
花火の音でも消せないんじゃないかと思ってしまうぐらい、わたしの鼓動が大きく鳴る。
「そ、そうだよ。ほかの人に教えたことないもん」
「へぇ〜。嬉し」
いつもの優しい目じゃなくて、少し意地悪な強気な目でわたしを見る。
会うたびに知らない狩谷くんの一面を知っていく。
「先輩、ぼく嘘は嫌いですよ?」
「嘘?なに言って…」
「ほかの人にここを教えたら…知らないからね?」
ドクッ
まただ…。少し怖く感じる狩谷くん。
だけど、身体は動かなくて目も逸らすことが出来ない。
ドーーーンッ
一際大きな音が聞こえた。
「あっ…きっと最後だよ」
せっかくの初めての花火大会
ラストも見てほしい。
「綺麗ですね…」
狩谷くんがわたしから少し離れる。
「今日はこれで満足してあげます」
わからない、この子が。
知りたいのに、知っていくたび知らないところがまた増えて
それの繰り返し。
一歩足を踏み入れたら最後
後戻りが出来ない気がする。
そんな、暑くて花火が綺麗で
危険な予感に満ちた夏の夜。



