「迷惑とかじゃないから」
わたしの肩にもたれてゆっくり歩く狩谷くん。
触れてる肩から狩谷くんの体温を感じる。
って、わたし!!
こんな時になに考えてんの!!
狩谷くん、酔って苦しんでるのに!
無事タクシーに乗って、狩谷くんのマンションの前に着いた。
「先輩…家まで送ります」
「いやいいから!!すぐそこだし!それより、部屋まで行ける?」
「う…はい。大丈夫…で…」
すんごいふらついてる。
ガシッ
わたしはまた肩を組んだ。
と言っても、背が高い狩谷くんとは組むと言うより支えると言った方が正しいんだろうけど。
「部屋までついていくよ。案内して?」
「……すみません」
初めて入るマンション。
そして5階に上がる。
503
「ここ?」
「はい…」
狩谷くんがズボンのポケットから鍵を出したけど、酔ってるせいでカシャンッと下におとした。
「わたしが開けていい?」
「ありがとう…ございます」
ドアを開けると、狩谷くんの匂いがした。
バタンッ
「へ!?」
玄関で靴もまだ履いたままなのに、その場で倒れた狩谷くん。
「ちょっと!!起きて!?」
「…うー…ぎもぢわる……」
吐く!?吐くか!!??
「もうちょっと待ってー!!」
急いで靴を脱がせる。
「狩谷くん!トイレ!トイレ行ける!?」
「は…い……」
初めて入った狩谷くんの部屋。
玄関からすぐ近くにトイレがあって助かった。
なんか…苦しそうだしツラそうだな。
どうしよう。。。
・・・・・・・・
「ゲホッ…」
くそ。。。
軽くのつもりがイラつきに負けて飲み過ぎた。
間違って飲んだフリで軽く酔っ払って…の予定だったのに
詩先輩が楽しそうに話してるのを見たら…勢いで飲み過ぎてしまった。(隣の友達の焼酎水割りを一気飲み)
トイレから出ると先輩はいなかった。
そりゃそうだな。
こんな姿引くよね。
ボフッ
ベッドに倒れた。
あーうまくいかない。
今日だって詩先輩とちょっとでも一緒にいたいから…
柄にもなく周りに声をかけた。
ぼくの目の届く範囲なら大丈夫だろうって過信してた。
やっぱり先輩は可愛いから、目を離せない。
すぐ悪い虫が寄ってくる。
〈先輩はまだ…〉
あの時は口が滑った。
まだ直接誕生日聞いてないのに知ってたらヤバイよね。
くそ…
明日からどうするか考えて…
ガチャッ
ん?
玄関から音がした。
起きあがろうとしたけど、身体がふらついてうまく起きあがれない。
「大丈夫!?」
え…
「先輩…なんで……?」
「なにか少しでも力になれたらなと思って…コンビニでスポーツドリンクとかお水買ってきたよ」
そう言いながらいそいそと袋の中からドリンクを出す先輩。
やっぱり先輩には敵わないな。
「え……」
先輩の左頬に触れた。
「な、なにかな!?」
焦ってる、可愛いなぁ。
「走ってきてくれたんですか?汗かいてる」
そんなに急いで買いに行ってくれたの?
あー、抱きしめたい。
どこまでぼくを夢中にすれば気が済むの。
「わっわたし汗かきだから!ごめんね、汗くさいよね!!」
ふらつく身体を起こして、先輩に近づいた。
「まったく。いい匂いで抱きしめたくなっちゃいました」
あ、顔が赤くなってる。
かわいい。
「バッバカ!!まだ酔ってるんだね!!早く寝なきゃ!!」
「先輩…声大きいです」
まぁ、酒のせいにして少し踏み込んでみた。
可愛い先輩の反応が見れたからいっか。
「あれ…??」
「どうしました?」
先輩が指差した先にあったのは、あの写真立て。
「なんでなにも写真入ってないの?」
気になるんだ。
「…理由聞きたいですか?」
先輩とぼくとの写真を入れるためですよ。
「えっと…」
ヴーッヴーッ
会話を遮るようにスマホのバイブ音が鳴った。
「先輩、電話じゃないですか?」
「あっそうだね」
先輩が鞄からスマホを出す。
「お母さんだ」
「…送ります」
「えっ!いいから!休んでて?なにかあったら連絡してね」
あーあ、帰っちゃった。
ヤバイなぁ
今まで我慢出来てたのに
いざ近くにくると、すげー欲しくなる。
もっと固めなきゃいけないのに。
逃げ場がなくなるように。



