「ちょっと亜紀!!あんないきなり失礼だよ!!」
「え、なんで?狩谷くんオッケーしてくれたじゃん」
そうだけど…
「詩もそろそろほかの人探さなきゃ〜。それにイケメンの周りはイケメンがいるって昔から聞くし」
いや、聞いたことないけど。
「狩谷くん、合コンとかする感じの子に見えないけど…。真面目だし嫌じゃないかな?私たちに気を遣って無理させちゃうんじゃ…」
そうだよ。無理させちゃう気がする。
「一人暮らしだから、ご飯とかもちゃんと食べてるか心配なんだよね。なんか色々無理しそうな子に見えるから」
「…一人暮らし、今関係ある??てかさ、詩って狩谷くんのこと弟みたいに見てる?姉みたいな心配の仕方してるけど」
え…姉……弟…??
そ、そうか
「そうだったんだ!!わたし、弟みたいに感じてるんだ!!」
ガシッ
わたしは亜紀の手を握った。
「亜紀のおかげで解決した!!ありがとう!!」
「…意味わからん」
そうか!そうだよ!!
最近のこの気持ちは、弟を思う気持ちだったんだ。
兄弟がいないわたしには今まで感じたことない気持ちだった。
弟のような可愛さで、ついつい色々気になっちゃうんだ。
なんだ、そっかー。
すごくスッキリしたぞ。
ー1週間後ー
実現した合コン。
亜紀がほかに友達も呼んで、4対4で集まることになった。
狩谷くんたちが予約してくれたお店。
なんだか少しオシャレな居酒屋さん。
個室だし。
「好きなもの頼んで♪」
狩谷くんの友達?の男の子が笑顔でそう言った。
亜紀たちが注文していく。
「あ、わたしは…オレンジジュースで」
「あれ?まだ未成年?」
「先輩はまだ…」
狩谷くんがなにか言いかけて言葉を止めた。
「なんだよ、狩谷」
「いや別に…」
「すみません、わたし誕生日まだで19歳なんです」
「そっかそっかー」
狩谷くん、なにを言おうとしてたんだろう?
「「かんぱーい」」
ドリンクも全部きたので、みんなで乾杯。
自己紹介をしていくと、どうやら4人中2人はわたしたちの1つ上で、高校の時の部活の先輩のようだ。
狩谷くんの部活…バスケ部だったよね。
「狩谷はほんと上手くてさー1年で入ってきてすぐレギュラーなるし、最初俺たちに嫌われてたよな」
「先輩、うるさいです」
ほんとにバスケ上手いんだ…
いつか見てみたいな。
時間が経って席替えをして、わたしの隣にはさっき狩谷くんが先輩と呼んでいた人がやってきた。
「詩ちゃんだっけ?可愛い名前だね」
「ありがとうございます…」
実は…合コン初めてだから緊張するんだけどー!!!
なに話したらいいか全然わかんないし!!
チラッと狩谷くんを見る。
亜紀が誘った友達と楽しそうに話してる。
私も狩谷くんと話したかったなぁ…。
って!!ん!?
弟みたいな子にこんな感情思うっておかしいのかな!?
いや、でも親しい人とやっぱり喋りたいし!!
「俺の話聞いてる?」
ハッ!!!
「ごめんなさい!!聞いてませんでした!!」
「ぶはっ!!詩ちゃん、おもろ過ぎるんだけど!!」
あれ、、、失礼なこと言ったのに笑ってくれた。。
「じゃあ俺の名前も忘れてそうだからもっかい言うね。智(さとる)です」
「智さん。覚えました」
「ほんとかよ」
なんか、、笑ってくれたおかげでちょっと打ち解けることが出来た。
優しい人でよかった。
ジャーッ
トイレを済ませて手を洗いながら、鏡を見る。
少し化粧直ししておこうかな。
リップを軽く塗り直してトイレのドアを開けた。
「あ、先輩」
「狩谷くん」
狩谷くんもお手洗い来てたんだ。
狩谷くんがわたしに近づく。
ふにっ…
「え………」
いきなり唇を触られた。
「あの人のために…塗ったの?」
唇に触れられた瞬間、体がゾクッとした。
でもこれは怖いとか嫌とかの感覚じゃなくて…
そこからドキドキが一気にわたしの身体を支配する。
「狩谷…くん?なに言って…」
どうしたの?
なんか変だよ…
「ぼく以外見るとか…許せな……」
ドシッ
「ひゃっ!」
狩谷くんがわたしの方に倒れてきた。
抱きしめられた!?って思ったけど、どうやら違う。
「うー…気持ちわる……」
酔ってる!?
酔ってるよね!!??
「飲んだの!?なんで!!??」
「…飲んで…ない」
いや、ベロベロですから。
飲んでるじゃん。
どうしよう。
「先…輩、ぼく帰り…ます」
えっ!!
「じゃあ、わたしも一緒に帰るよ!」
みんなに謝って先に狩谷くんとお店を後にした。
「狩谷くん、しんどくない?歩ける?あの大通りでタクシー拾うから」
「はい…迷惑かけてすみません」



