先輩はぼくのもの



「…とりあえず部長キモイな」

「……」

なぜか、うんとまだ言えないわたし。



「サークル辞めんの?まぁ、嫌々行くもんじゃないしね…」

「うん…。辞めよっかな」

こんな私情で辞めるの、ほかの人たちに申し訳ない気もするけど。


「それにしてもイケメン狩谷くんは王子様みたいだね〜」

「王子!?」

「詩のピンチを助けてくれるし、家まで送ってくれたり住んでるとこ近かったり、縁有りすぎじゃん?」

まぁ、、縁はほんとあるなぁって思う。


「乗り換えたら?」

「はぁ!!?」


「そこー!!うるさいぞ!ちゃんと授業受けないなら単位無しだからな!」

「「ごめんなさい」」

体育、来年も取るとか絶対やだ!!



ひそっ
「でもさ、狩谷くんて1年生の中でマジ人気らしいよ?イケメンでスタイル良くて、頭良くて、運動も出来るらしいし?」

亜紀が小声で言ってきた。

「なっなんでそんなこと…!?」

「一応教えといてあげよーと思って」


もう。
別にそんなこと聞いたってなんとも思わないし。



ーーーーーーーーーーー

「夕方はたくさん売れるから、手が空いたらすぐ焼き上がったパンを補充してね」

「はい。この使用済みのトングとかはどこに置きます?」


バイト中。
今日からの狩谷くんに仕事内容を教えていく。


「うわっこれもうまそ〜」


〈でもさ、狩谷くんて1年生の中でマジ人気らしいよ?イケメンでスタイル良くて、頭良くて、運動も出来るらしいし?〉


狩谷くんの横顔を見ていたら、朝の亜紀の言葉を思い出してしまった。


ん?っという顔でわたしを見る狩谷くん。
わたしはパッと顔を伏せた。



なんか…変。



・・・・・・・

大学内でちょこちょこ見かける狩谷くん。
友達と楽しそうに話してる。

そんな狩谷くんを目で追ってしまうわたし。


やっぱ…わたし変だ。




1週間後ーー


「ほんとにサークル辞めたんだね」

「うん。勝手でごめんね。翔のいるところで笑える気がしなくて…」

「全然!なんで謝んの。あたしも辞めよっかなー。詩いないなら」

「あ、わたしのせいで亜紀までなんて…!!」


もうすぐ始まる授業。
その前に亜紀と話していた。



「ぼくも辞めました」


え???

声のする方へ振り向くと狩谷くんがいた。


「一緒の授業っすね」

特別講習。
まさか一緒だなんて。

ドキドキしてきて…なんかわたし…

嬉しい。。



いや!!それより!!

「狩谷くん、辞めたって!?サークルを!?」

「はい。先輩いないなら行く意味ないし」


な、なにそれ…
鼓動が速くなる。

それにわたし…
絶対顔赤い。


どういう意味で言って…「想汰〜!なにしてんのー?早くー」

少し前の席の方から狩谷くんを呼ぶ女の子が。


「はいはい。じゃ、先輩またね」


狩谷くんが女の子の元へ行った。
女の子が隣に座る狩谷くんの腕に自分の腕を絡めた。

なんだかすごく親しそう。



「あー、天然の人たらしだね。あれは」

亜紀の言葉が不思議とスッと自分の中に入ってきた。


人たらしか。

さっきの言葉だって…意味とかあるわけないよね。

家も近くてバイト先も一緒の先輩だから、知ってる人がいなくなるってぐらいの意味だよね。


なんかすごいスッキリした。


「亜紀、ありがと!」

「はい?なにが??」


翔のことで心がちょっと弱っちゃってるんだ。