センセイは透明感ハンパない

俺は、ひたすら勉強をし、ひたすらアルバイトをし、ひたすら先生の授業を受け、ひたすら本を読んだ。そしてひたすら進路指導室日参し、赤本を借りたり大学の情報を集めたり、教師陣の意見を聞いたりした。
そして、
今日、先生の通う大学を案内してもらう。

梅雨が近づき蒸し暑さが増す中、先生はブルーの日傘をさして時計台の下にいた。今日も10分前に。
俺は「先生ー!!」と声を上げ、右手を上げ、自転車の波に突っ込んだ。
もおー、違法駐車やめろー!!
「もしかして、視野、狭い?」
「傷広げないでください」
「怪我してない?」
「ありがとうございます。大丈夫です」
(優しい!!)
「行こうか」

先生はブルーの日傘をくるりと回し、俺を中に入れてくれた。蒸し暑さが少しやわらいだ気がした。

(赤い門!!)
ここが日本の最高学府!! 俺の成績では絶対に入れない!!
日曜日なのにひとがけっこういた。学生だけではなく教授やスタッフらしきひとたちも。数人が先生にあいさつして通りすぎていった。もしかして先生って大学でも人気者!?
キャンパスをゆっくりと歩いてまわる。古い建物がいっぱいだ。新しく立て替えたものも。木々もいっぱい。
(あー)

なんだか生き返る心地だ。ここの雰囲気とっても好き。古い建物も新しい建物も木々も学生たちやここで働くひとびとも、すべてが調和している。
(今から頑張ってもこの大学はさすがに現役合格無理だわ)
現実が厳しすぎてしぼみそうだ。先生は、留学生らしき集団と軽いあいさつをかわしている。何語だろう。
(学生としての先生が、しなやかに生きる場所)

俺は、改めて惚れ惚れと先生を見た。先生は澄ました顔をしていた。

「先生。
俺を叱ってください」