(俺の、ブレない軸?)
次の日は喫茶店のバイトがあった。近くに出版社などのオフィスがある関係で平日昼は混むらしいが(その時間、俺は学校へ行っているので真実はわからない)日曜日の昼はほどほどにお客さんがいる。今日は朝から雨がザアザア降っていてひやりと寒いので客足はすぐに途絶えた。
店長は友人と俺のためにまかないを用意してくれていて、友人は壁の掃除をし、俺は調子の悪い振り子時計を古新聞の上で分解して、部品をチェックしていた。
「なぁ、
俺の長所って何?」
「単純なところ」
友人は俺の質問に即座に答えた。ぐうの音も出ない。
「素直なところだな。言うておだてに弱い」
「……」
「貴重な人材だと思うぜ。褒めれば褒めるほど良いパフォーマンスするの」
「う、うん?」
友人は壁を拭きおえ、飾ってある三角ペナントの位置を直し、絵や写真を入れた写真立てもひとつひとつ取って綺麗に拭いて戻す。そろそろ新しいのと入れ替えようかな、などとつぶやきながら。
「知ってるか?
この喫茶店、後継者がいないから、店長の代で閉めるんだって」
「え!!」
友人がこちらを見た。無表情だった。
「そこに現れし俺」
「え、おまえ、ここ継ぐって決めたの!?」
「そう。
だから大学行って、レストランサービスと経営学ぶ」
「……」
友人がここの経営者になる気満々らしい。つまり、3代目、か、4代目?(どっちだっけか)
俺は手元の時計の部品を見る。定期的にみがいているのでサビは少ないが、経年劣化で少し形が変わったり、傷があったりする。この時計、俺たちの何倍の時間、ここでボンボン言ってたんだろう。それこそ100年休まずにだろうか。
「おまえはどうする?」
る
友人の黒い目がわずかに光を帯びた。
「どうするって」
「目的もなく大学行って学士取って就職につなげるのもひとつの選択だと思うけど、
おまえさ、自分に何が向いてるか、真剣に考えたり調べたりしたことある?」
「え」
俺は友人の顔を見、それから手元の部品を見た。バラバラだ。俺がバラバラにした。
「やりたいこと特にねぇんだったら、俺といっしょにこの店継ごうぜ」
「え」
カツの揚がる香ばしい匂いがしてきた。雨が遠ざかる気配がする。
次の日は喫茶店のバイトがあった。近くに出版社などのオフィスがある関係で平日昼は混むらしいが(その時間、俺は学校へ行っているので真実はわからない)日曜日の昼はほどほどにお客さんがいる。今日は朝から雨がザアザア降っていてひやりと寒いので客足はすぐに途絶えた。
店長は友人と俺のためにまかないを用意してくれていて、友人は壁の掃除をし、俺は調子の悪い振り子時計を古新聞の上で分解して、部品をチェックしていた。
「なぁ、
俺の長所って何?」
「単純なところ」
友人は俺の質問に即座に答えた。ぐうの音も出ない。
「素直なところだな。言うておだてに弱い」
「……」
「貴重な人材だと思うぜ。褒めれば褒めるほど良いパフォーマンスするの」
「う、うん?」
友人は壁を拭きおえ、飾ってある三角ペナントの位置を直し、絵や写真を入れた写真立てもひとつひとつ取って綺麗に拭いて戻す。そろそろ新しいのと入れ替えようかな、などとつぶやきながら。
「知ってるか?
この喫茶店、後継者がいないから、店長の代で閉めるんだって」
「え!!」
友人がこちらを見た。無表情だった。
「そこに現れし俺」
「え、おまえ、ここ継ぐって決めたの!?」
「そう。
だから大学行って、レストランサービスと経営学ぶ」
「……」
友人がここの経営者になる気満々らしい。つまり、3代目、か、4代目?(どっちだっけか)
俺は手元の時計の部品を見る。定期的にみがいているのでサビは少ないが、経年劣化で少し形が変わったり、傷があったりする。この時計、俺たちの何倍の時間、ここでボンボン言ってたんだろう。それこそ100年休まずにだろうか。
「おまえはどうする?」
る
友人の黒い目がわずかに光を帯びた。
「どうするって」
「目的もなく大学行って学士取って就職につなげるのもひとつの選択だと思うけど、
おまえさ、自分に何が向いてるか、真剣に考えたり調べたりしたことある?」
「え」
俺は友人の顔を見、それから手元の部品を見た。バラバラだ。俺がバラバラにした。
「やりたいこと特にねぇんだったら、俺といっしょにこの店継ごうぜ」
「え」
カツの揚がる香ばしい匂いがしてきた。雨が遠ざかる気配がする。



