桜の花びらが舞う4月の午後。
スーツケースを引きながら、白のロングカーデにネイビーのスカートを揺らし歩く花恋。清楚そのもの。

花恋(モノローグ)
(今日から、東京の大学生活──)
(“ギャルだった自分”とは、ちゃんとサヨナラしてきた)
(過去の恋も、見た目も、全部リセットして)
(もうチャラくない。もう恋で失敗しない。真面目に、生きるって決めたから)

ト書き:
門柱の表札には「シェアハウス HAZE」と記載。
花恋は呼び鈴を押す。

インターホン越しに反応なし。
そのままドアを開けると、ロビーに黒い影が立っている。

ト書き:
黒髪を無造作にまとめた長身の男。睨むような鋭い目つき。

???「……お前、なんでここに」

花恋「……っ、司……?」

ト書き:
花恋、足が止まる。脳裏にフラッシュバック。

【フラッシュバック:高校時代】
司に手を引かれ、夜の駅前でキスされるギャル姿の花恋。

御影 司(回想)「黙って俺のものになればいい」

【現在に戻る】

花恋(目を見開いて)「……なんで、司が……!?」

ト書き:
そこにもう一人、冷たい声がかぶる。

???「……花恋、やっぱり君だったか」

ト書き:
眼鏡にシャツ。端正な顔立ちの桐生 澪が、階段から降りてくる。

花恋(唇を引き結び)「……澪まで……」

【フラッシュバック:図書館の机越しに本を渡される】

桐生 澪(回想)「付き合っても、図書館では騒がないで」

【現在】

花恋(内心)(ウソでしょ……偶然、って言える数じゃない)

ト書き:
花恋が玄関先で凍りついていると──

???(あくび混じりに)「んー、誰か来たの?」

ト書き:
眠たげな目の男、羽瀬 柊真がダボっとしたパーカー姿で登場。

柊真「花恋……だ」

花恋(絶句)「う、そ……」

【フラッシュバック:夏の教室、花恋が眠る柊真の頬をつつく】

花恋(回想)「寝てばっかで、私のこと好きじゃないでしょー?」

柊真(回想)「寝言で“好き”って言ったのに、聞こえてなかったのか」

【現在】

花恋(モノローグ)
(やばい。ほんとにやばい)
(これ、悪夢? リアルに?)

ト書き:
そして最後、元気な足音が聞こえる。

???(弾む声)「わぁーい! ほんとに花恋ちゃんだっ!」

ト書き:
とびきり可愛い少年フェイスの千堂 うるが、花恋にタックルする勢いで抱きつく。

千堂 うる「うれしいな〜! やっぱり花恋ちゃん、かわいい〜!」

花恋(振りほどいて)「ちょ、ちょっと、うる!? まじで、なんで!?」

【フラッシュバック:放課後の屋上】

千堂 うる(回想)「ねぇ、僕じゃ“だめ”? 可愛いだけじゃ、だめなの?」

【現在】

花恋(内心)(高校時代に付き合って、フッて、それっきりだったはずなのに…!)

ト書き:
イケメン4人に囲まれて、花恋ひとり。
玄関先の風がやけに冷たい。

御影 司(低く)「お前、逃げたよな。俺から」

桐生 澪(淡々と)「大学変えても、過去は消えないよ」

羽瀬 柊真(口元に笑み)「まあ、また夢みたいでいいけど」

千堂 うる(にっこり)「……ねえ、もう一回、僕と付き合ってくれる?」

花恋(モノローグ)
(清楚系で真面目な大学生活のはずが)
(まさか“全員元カレ”と、同じ家に住むなんて──聞いてない)

花恋(顔を真っ赤にしながら、心の声)
「ねぇ……神様、ほんとにこれは、新生活なの?」