(回想始まり~)
〇桜が満開の春。
【恋モノローグ】
私、葉奈乃 恋は晴れて念願の医療大学リハビリテーション科学部理学療法学科に入学した。
「念願の」というのには、理由がある。
高校時代、全力で陸上に青春を捧げてきた私はいつも怪我が絶えなかった。
しかも大事な大会前に限って大怪我をするという、不運に愛された残念な女。
〇大きな総合病院のリハビリ室
【恋モノローグ】
その度にスポーツ治療に定評がある整形外科に通っていたのだが、そのリハビリ室のセラピストに何度も助けてもらった。
怪我をするたびに精神的にも肉体的にもどん底に落ちる私を、担当の星先生は優しく励まして治療してくれた。
そんな星先生に恋に落ちるのは必然だった。
星先生は童顔でマッシュルームカットが似合う子犬系男子。
可愛い顏に似合わず、低い落ち着いた声でゆっくりと喋るのがギャップ萌えだ。
〇リハビリ室の横の廊下
【恋モノローグ】
私が星先生に告白したのは高三の春だった。
私の想いとは裏腹に先生は困った顏で目を逸らせた。
星「私は、女性が苦手なんです。」
【恋モノローグ】
二年ちょっと拗らせた私の初恋は、ひと言でフラれて終わった。
そして私は、リハビリの途中で病院に通うのをやめた。
でも、恋を失っても星先生のリハビリに向き合うリスペクトだけは捨てられなかった。
〇受験勉強をする恋
【恋モノローグ】
将来の進路を決める時に、私は四年制の医療大学を第一志望に選んだ。
失恋が職業を決めるきっかけになったなんて、人生は皮肉だ。
〇桜が満開の春
親友のひまりと入学式で自撮りする恋。
【恋モノローグ】
卒部後は寝る間も惜しんで猛勉強した。
その努力が実って、見事、理学療法士が目指せる医療大学のリハビリテーション科学部に合格。
髪も肩より長く伸ばして、第二のアオハルへの期待と夢のセラピストに胸を膨らませていた。
恋(キラキラ女子大生ライフを満喫して、星先生のことなんか忘れてやる!)
【恋モノローグ】
ところが、そんなに現実は甘くなかった。
高校と大学は授業の質が全然違う。
医療大学ならなおさら。
講義・実習・演習、課外活動。
そして大学生活は自己管理能力が試される。
マニアックな教授の講義はちんぷんかんぷんだし、必修授業をこなすだけでも一週間があっという間。
実習の内容によっては学校に寝泊まりして研究結果を出さなきゃならないこともある。
私は最初の一週間で挫折を味わった。
恋(みんな、どうやって時間のやりくりしてるの?)
〇早朝の満員電車
【恋モノローグ】
一日が二十四時間じゃ少な過ぎる。
満員電車に押しつぶされて一ヶ月を過ごしたら、気づけばひまり以外に話す友だちが居なくなっていた。
恋(このままじゃ、時間に忙殺される!)
〇昼休みの学食
看護学科に通学していた恋の親友のひまりが、急にキラキラしたワンピース姿で昼休みの学食に現れた。
恋はヨレヨレのスウェットの裾を引っ張りながら、ひまりにツッコミを入れた。
恋「ちょ…私たちスウェット同好会の理念はどうしたの?」
ひまり「ないでしょそんな同好会。」
恋「明日、地球が終わるから最後に着飾ったの?」
ひまり「終わるか! アンタって無自覚失礼だよね。たまには私もオシャレくらいするよ。」
恋「ハッ! まさか彼氏でもできた⁉」
ひまり「違うってば。車の免許を取ったからだよ。」
恋「あ、試験受かったんだ。おめでとう!」
ひまり「恋も取ったらいいじゃん。人生変わるよ。」
恋「変わるかー。」
ひまり「私にも出来たんだから、恋にも出来るよ♪」
恋「うん。オシャレキャンセル界隈のひまりが変わったなら、私にもできるよね!」
ひまり「いちいち失礼だから!」
〇恋の瞳が少女マンガのようにキラキラ輝く。
恋「私も免許、ゼッタイ取る‼」
【恋モノローグ】
こうしてひまりに感化された私は、三か月で車の免許を取得してキラキラ女子大生ライフを再スタートした。
(~回想終了)
♢
〇現在の恋。
以前よりも少しだけ小綺麗な恰好になっている。(フレアブラウスにデニム)
どよーんとした顏。
【恋モノローグ】
再スタートしたのだが、したのだがっ、いきなり物損事故だなんて!
恋「なんで、なんでこんなにツイてない人生なのー?」
〇車の横でむせび泣く恋。
恋「えーん、絶対に何かに呪われている。
悪霊退散!
ケセラセラ!
トイトイトイ!
アーメンソーメンワンタンメン!!」
〇碓井礼央の指示通りに恋はスマホでライトが潰れたセダン車の全体写真を撮り、大学の事務室に駆け込んだ。
〇桜が満開の春。
【恋モノローグ】
私、葉奈乃 恋は晴れて念願の医療大学リハビリテーション科学部理学療法学科に入学した。
「念願の」というのには、理由がある。
高校時代、全力で陸上に青春を捧げてきた私はいつも怪我が絶えなかった。
しかも大事な大会前に限って大怪我をするという、不運に愛された残念な女。
〇大きな総合病院のリハビリ室
【恋モノローグ】
その度にスポーツ治療に定評がある整形外科に通っていたのだが、そのリハビリ室のセラピストに何度も助けてもらった。
怪我をするたびに精神的にも肉体的にもどん底に落ちる私を、担当の星先生は優しく励まして治療してくれた。
そんな星先生に恋に落ちるのは必然だった。
星先生は童顔でマッシュルームカットが似合う子犬系男子。
可愛い顏に似合わず、低い落ち着いた声でゆっくりと喋るのがギャップ萌えだ。
〇リハビリ室の横の廊下
【恋モノローグ】
私が星先生に告白したのは高三の春だった。
私の想いとは裏腹に先生は困った顏で目を逸らせた。
星「私は、女性が苦手なんです。」
【恋モノローグ】
二年ちょっと拗らせた私の初恋は、ひと言でフラれて終わった。
そして私は、リハビリの途中で病院に通うのをやめた。
でも、恋を失っても星先生のリハビリに向き合うリスペクトだけは捨てられなかった。
〇受験勉強をする恋
【恋モノローグ】
将来の進路を決める時に、私は四年制の医療大学を第一志望に選んだ。
失恋が職業を決めるきっかけになったなんて、人生は皮肉だ。
〇桜が満開の春
親友のひまりと入学式で自撮りする恋。
【恋モノローグ】
卒部後は寝る間も惜しんで猛勉強した。
その努力が実って、見事、理学療法士が目指せる医療大学のリハビリテーション科学部に合格。
髪も肩より長く伸ばして、第二のアオハルへの期待と夢のセラピストに胸を膨らませていた。
恋(キラキラ女子大生ライフを満喫して、星先生のことなんか忘れてやる!)
【恋モノローグ】
ところが、そんなに現実は甘くなかった。
高校と大学は授業の質が全然違う。
医療大学ならなおさら。
講義・実習・演習、課外活動。
そして大学生活は自己管理能力が試される。
マニアックな教授の講義はちんぷんかんぷんだし、必修授業をこなすだけでも一週間があっという間。
実習の内容によっては学校に寝泊まりして研究結果を出さなきゃならないこともある。
私は最初の一週間で挫折を味わった。
恋(みんな、どうやって時間のやりくりしてるの?)
〇早朝の満員電車
【恋モノローグ】
一日が二十四時間じゃ少な過ぎる。
満員電車に押しつぶされて一ヶ月を過ごしたら、気づけばひまり以外に話す友だちが居なくなっていた。
恋(このままじゃ、時間に忙殺される!)
〇昼休みの学食
看護学科に通学していた恋の親友のひまりが、急にキラキラしたワンピース姿で昼休みの学食に現れた。
恋はヨレヨレのスウェットの裾を引っ張りながら、ひまりにツッコミを入れた。
恋「ちょ…私たちスウェット同好会の理念はどうしたの?」
ひまり「ないでしょそんな同好会。」
恋「明日、地球が終わるから最後に着飾ったの?」
ひまり「終わるか! アンタって無自覚失礼だよね。たまには私もオシャレくらいするよ。」
恋「ハッ! まさか彼氏でもできた⁉」
ひまり「違うってば。車の免許を取ったからだよ。」
恋「あ、試験受かったんだ。おめでとう!」
ひまり「恋も取ったらいいじゃん。人生変わるよ。」
恋「変わるかー。」
ひまり「私にも出来たんだから、恋にも出来るよ♪」
恋「うん。オシャレキャンセル界隈のひまりが変わったなら、私にもできるよね!」
ひまり「いちいち失礼だから!」
〇恋の瞳が少女マンガのようにキラキラ輝く。
恋「私も免許、ゼッタイ取る‼」
【恋モノローグ】
こうしてひまりに感化された私は、三か月で車の免許を取得してキラキラ女子大生ライフを再スタートした。
(~回想終了)
♢
〇現在の恋。
以前よりも少しだけ小綺麗な恰好になっている。(フレアブラウスにデニム)
どよーんとした顏。
【恋モノローグ】
再スタートしたのだが、したのだがっ、いきなり物損事故だなんて!
恋「なんで、なんでこんなにツイてない人生なのー?」
〇車の横でむせび泣く恋。
恋「えーん、絶対に何かに呪われている。
悪霊退散!
ケセラセラ!
トイトイトイ!
アーメンソーメンワンタンメン!!」
〇碓井礼央の指示通りに恋はスマホでライトが潰れたセダン車の全体写真を撮り、大学の事務室に駆け込んだ。



