18時55分。
打ち上げ開始5分前のアナウンスが流れる。
「20000発の花火ってさ、どのくらいあるんだろうね!」
チラシを隅から隅まで眺める。
「そりゃあもう大量にだろ」
レジャーシートに寝そべった葉月が適当に答える。
それからあっという間に5分が過ぎ、花火の打ち上げが始まった。
こんなに近くて見る花火はとても綺麗で、美しくて、泣きそうだった。
1時間半なんて、あっという間だった。
グランドフィナーレ。
夜空を彩る大輪の花、全部全部目に焼き付けておこうと思った。
終わって欲しくないなあ。
これが終わったら、私、本当にもう葉月とお別れなんだ。
最後の花火が打ち上がって、一際大きな音とと共に咲いて、それから、夏の夜空に煌めいて、最後のカケラが、消えた。
今日は、葉月と会える最後の日で、初めてデートをした日で、葉月の誕生日。
「葉月、」
「うん?」
花火が消えた後の夜空を見つめていた葉月が、私の方を向く。
いつもの、大人っぽい顔で、薄く微笑んで私を見る。
私は、俯く。
私は泣いていた。
「…誕生日、おめでと…」
言い終わらないうちに、葉月の唇が、私の唇に触れた。
唇が離れて、それから葉月が「ありがとう。」って言って、いつもみたいにニコッて笑った。



