葉月は本当に、最後までクラスの人に言わなかった。




8月15日。


花火大会当日。


この日のために浴衣を買った。浴衣を買いたい、と言った私を、お母さんはすごく嬉しそうに近くのショッピングモールに連れて行ってくれた。




髪の毛はお姉ちゃんがセットしてくれた。
「彼氏?」
お姉ちゃんが聞いてくる。
「彼氏じゃないよ。」
「どっちが誘ったの?」
「あっち。」
「え〜!じゃあやっぱ男の子なんだ!告られるかな?」
「告られないよ。」
「え〜なんでよ〜」




だって、これはお別れだもん。








待ち合わせ場所の駅前はすごい人混みだった。本当にこんな中で会えるんだろうか、と心細くなる。
スマホを握りしめて、顔をあげると、少し遠くに、その顔を見つけた。


葉月が近づいて来て、「よぉ」ってバツが悪そうに笑う。


「見つけてたなら声かけてよ。」
「ごめん。笑」


葉月が口元を手で覆ってククッて笑う。
バン!って、浴衣について来たカゴのバックで太ももを叩く。
「痛ぁ!笑」


会場に向かって歩き出す。


「俺を探してるとこも、可愛かった。」


「性格わる」


今、も、って、言った。