ぱちぱち。明るく火花を散らしながら輝く花火を見つめる。
「花、」
「ん?」
「好き。」
「うん。」
まだ、言われることは慣れなくて。
そんな私を見て、葉月がまた、目を細めて笑う。
「花は?」
「え?」花火が消える。「あ……。」
葉月の方を見る。
「好き、だよ。」
葉月が私の頭に手を伸ばして、髪を撫でる。
優しく、私の頭を撫でる。
葉月の大きい掌。
湿度の高い空気のにおい、花火が消えた後のにおい。
もう、花火が消えても、お別れしなくていいんだ。
鼻の奥がツンとして、視界が滲む。
10代の恋は、甘くて泡立って、すぐに消える。まるでクリームソーダみたい。
炭酸の泡が水面に浮かんで、弾けるように、あの夏の思い出が、胸の奥で膨らんで、浮かび上がって、夏の夜に弾けた。
この夏、私たちはもう一度恋をした。



