夏休みに入る前のある日の帰り道。




「俺寄りたいとこあんだけど。」




ついていくと、そこは、どこか懐かしさのある喫茶店。入り口には「冷房効いてます。」の貼り紙。


葉月がドアを開ける。チリンと鳴るドアベルの音と、少し古びたウッド調の店内。


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運ばれて来たクリームソーダ。


私は緑で、葉月は青だった。


「あ〜緑いいなぁ。」
「なんで?」
「クリームソーダといえば緑じゃん。」
「青もいいじゃん、夏の空みたい。」
ソーダが空で、上に乗った白いアイスクリームが入道雲。


「たしかに」


葉月がニコニコして、柄の長いスプーンでアイスクリームをつつく。氷がカラカラって音を立てる。氷の音と、窓の外の蝉の声、店内の小さなジャズの音、この音がこのときの私の世界のすべてだった。その音の間で、葉月が「あのさ俺、今度引っ越すんだよね。」と言った。


私は、クリームソーダと言えば緑、の定番のそれをつつく手をとめた。